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駄目親父としっかり娘の珍道中
第34話 思い出は遠き彼方へ・・・
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る濁流の様に、力が流れ込んできて全身に行き渡っていく。

【この鼓動……まさか、こんな所で!】
「感じる……私の中で、力が湧き上がるのを、熱い鼓動が流れ込んでくるのを!」

 力が溢れ出てくる感覚は止まらなかった。爆発するほどの勢いで力が増していく。
 腕を持ち上げた。体を拘束している雷撃を物ともせずに、腕が持ち上がる。
 なのはは思い切り両腕を振り切った。雷撃の鎖は音を立てて切断され、その余波を受け、左右にあった光の弾は爆発し、消滅した。
 それですら納まらず、力は増していく。

【間違いない、何故だ! 何故今になって起動したのだ? 今の今まで全く起動する兆しを見せなかったと言うのに……何故!】
「それは、私が願いを言わなかったからだよ。私は願った! もっと力が欲しいと! 皆を守れる力が欲しいと。だから、それに答えてくれた。私の願いに、答えてくれたんだよ!」

 強く、純粋で強い願いがなのはの体内に宿っていたジュエルシードを目覚めさせたのだ。そして、その光と力はなのはに決着を付ける事を命じた。
 
”決着をつけるんだ! 私の分身を封じて欲しい。この戦いに終止符を打って欲しい! 君の手で”

 言葉になのはは頷く。持っていたデバイスを魔王に向ける。デバイスが形を変えていく。円形状だった先端が形を変え、鋭い槍の様な先端へと変わる。杖の持ち手部分に一握りのトリガーが姿を表す。それになのはは指を掛けた。

【おのれ、また封印などされてなるものか! 私は自由だ! 私を縛るものはもう無い! この世から消え去れ!】

 魔王の口から閃光が発せられた。今までのどのそれよりも大きく、そして不気味さを増した邪悪な光が放たれる。
 だが、その邪悪な光を前にしても、なのはは引き下がらなかった。
 この一撃で終わらせる。この戦いに終止符を打つ。その為の力だ。
 そして、これがなのはの放つ初めての魔法だ。

「プレシアさん、今助けます! ジュエルシード、封印!」

 なのはは叫び、トリガーを引いた。デバイスの先端から閃光が発せられた。
 桜色の強く、熱い、一筋の閃光が放たれた。
 邪悪の閃光と桜色の閃光が激しくぶつかり合う。
 閃光が二つに分かれた。巨大な邪悪な閃光は桜色の閃光にぶつかったと同時に粉々に粉砕され、その先に居た魔王の胸部を貫通した。

【ぐがっ、があぁぁ!】

 断末魔の悲鳴を上げる。魔王の体に無数の亀裂が走る。亀裂は瞬く間に全身に行き渡っていき、やがてそれを中心にして魔王の体が激しい爆発を起こした。
 爆発はやがて閃光となり辺りを光の闇として覆っていく。何も見えない。
 只真っ白な世界が其処にある。
 何も見えない。見る事が出来ない。だが、これだけは分かる。
 今、戦いが終わったのだと。

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