第34話 思い出は遠き彼方へ・・・
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ってる哀れな獣の力しか感じられない」
冷淡に、それでいて的を射た言葉を放った。正しくその通りだった。怪物はただただなのはが怖かった。
他の人間とは違い、自分を恐れない。それどころか湧き上がって来るその力は明らかに自分を遥かに超えている。力だけじゃない。
その心も、魂も、全てが自分を超えているのだ。
怪物の目に錯覚が感じられた。今まで豆粒の様に小さく見えた少女が、今度は逆に大きく見えるのだ。
恐怖に支配され、逃げ惑う哀れな獣である自分を、冷淡に見下ろすかの様にその姿は見えた。
恐れるな! 相手はたかが子供一人だ! 本気を出せばこんな子供ひと捻りで殺せる筈なんだ!
雄たけびを挙げて首を左右に大きく振る。認める訳にはいかない。自分がなのはに恐怖してしまった事を。
認める訳にはいかない。自分がなのはに勝てないと悟ってしまった事を。
認める訳にはいかない。自分が怪物ではなく獣に成り下がってしまった事を。
その思い全てを振り払うかの様に雄たけびを挙げた。そして、今度は雄たけびだけでは終わらなかった。
背中に生えていた羽を大きく広げる。羽を広げただけだと言うのに、その大きさが以前のよりも遥かに大きく見えた。
いや、大きさが変わっただけじゃない。その化け物からは今までとは比べ物にならない程の不気味さが感じられた。
本能が告げている。危険だと……
「みんな、早く此処から逃げて!」
***
「みんな、早く此処から逃げて!」
突然そう言われた。何かを察知したのだろう。とてつもなくやばい何かを。
急ぎ此処から離れなければならない。でなければ、確実に此処に居る者達全員がお陀仏となってしまう。そう思ったからなのはは叫んだと思われる。
しかし、此処は時の庭園の奥である玉座。此処からアースラまで戻るには時間的に掛かり過ぎる。明らかに間に合わない。それに、飛んで逃げようにも外は虚数空間が広がっている。飛行魔法が使用出来ず、出れば重力の底まで落ちるだけ。
どうする。どうやって逃げる。誰もが答えを求めた。だが、明確な答えを持つ者は誰も居なかった。
銀時も、土方も、沖田や近藤は勿論、クロノ達でさえ、答えを見出せないで居たのだ。
「皆、無事?」
声がした。その方に居たのはリンディだった。確か、アースラで待機していた筈の彼女が何故此処に?
「説明している暇はないわ。転移魔法でアースラに戻ります。皆集まって!」
地獄に仏だった。転移魔法でなら一瞬でアースラに戻れる。だが、それはリンディの近くに居る者達だけだ。
なのははどうなる?
彼女は今怪物の間近に居る。助けようにも今からでは間に合わない。だが、だからと言って見捨てると言うのか?
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