第34話 思い出は遠き彼方へ・・・
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一言で言うなら静かだった。先ほどの激闘がまるで嘘の様に静まり返っている。
怪物も、なのはも、見守っている銀時達でさえ、誰一人としてその場から動こうとはしない。
誰もが緊張の余り心臓が張り裂けんばかりの気持ちでその場に居る事だけは確実だった。
一瞬の内に勝負が決まる。正にそんな状況だった。しかし、そんな中で、なのはは不思議と落ち着いていた。
今、なのはの頭の中では自分のデバイスを手渡された際に言われた言葉をひたすら繰り返していた。
今まで自分が見て来た戦いの記憶から自分の戦いを模索する。それだった。
初めて戦いを行った際には初陣の緊張と湧き上がる力の勢いに任せて乱暴な戦いを行ってしまっていた。その為に自分自身もかなりの痛手を被ってしまい痛々しい結果を残すこととなった。
だが、それでは意味がない。これでは戦いじゃなく獣の喧嘩だ。私は獣じゃない! 列記とした人間だ!
深く、そして大きく息を吸い込む。口から吸収された空気が肺と通り、全身に行き渡っていく。体中の血が滾ってくるのが分かる。
体内に埋め込まれている青い宝玉が心なしか歓喜に震えているようにも思えた。
その歓喜に呼応し、なのはの魂もまた震え上がっているのが分かる。
”もっと力を使え! 遠慮するな。手加減などせず全て出し切るつもりで力を使っていけ! この程度の相手に力を使いきる事はまずない。思い切り行け!”
まるでそう言っているかの様に今、なのはの中では覚醒した魔力が唸りをあげているのが分かる。外に出ようと小さな少女の体の中でその猛威を振るっているのが分かる。凄まじい力に振り回されそうな気持ちになる。
だが、それでは前の戦いと同じだ。獣じゃなく、人になるんだ。
その為に、なのはは今までの奮い立っていた気持ちを落ち着かせていた。落ち着いて、冷静になれ。
激情の感情を抑え、冷たい水の様に心を沈め、神経を研ぎ澄ませる。相手を良く見て戦え。戦い方は決まっていない。ならば、自分の思い通りに戦えば良い。
何と簡潔かつ単純な答えだろうか。こんな単純な答えに今まで自分が悩んでいたと思うと笑いが込み上げてくる。
その間も、なのはの体は休む事なく周囲の光を取り込み、体内で自分の力に変えている。その光の強さが、熱さがそのまま力に変わって行く感覚だ。
両拳を堅く握り締めてみる。漲った力が今すぐにでも爆発したいと叫んでいる。体中が雄たけびを挙げている。
早く戦いたい。早く解放されたい。早く力を使いたい。
駄々をこねる子供の様に力はなのはにせがんできた。自分の力なのにまるで別人のようだ。其処が何所と無くおかしく思えた。
だからこそ、それを使うのは今を置いて他にない。今ならば仲間の皆は遠くに居る。全力で戦っても巻き添えは恐らくない。もしあったとしても
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