第31話 愛情も度が過ぎれば狂気
[2/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
なるだけ無視して、急いで帰り道を急ぐ。
その結果、家に着くのに案外時間は掛からなかった。
代わり栄えのない風景だ。
昼間なのでまだ看板はないが、目の前にあるのはなのはの家を取り仕切っているお登勢がやっているスナックがある。そして、その上の階こそ、なのはの家なのだ。
だが、見上げてみて、其処でも違和感を感じた。
「あれ? ない!」
そう、無いのだ。本来、一階と二階の間辺りに、でかでかと「万事屋銀ちゃん」と書かれた看板が立て掛けられてる筈なのだ。
その看板が見当たらないのだ。
一体どう言う事なのだろうか?
とにかく、此処は一旦家に帰る必要がある。階段を駆け上がり、二階の唯一の出入り口であるスライド式の扉に手を掛ける。
扉はガタガタ音を立てるだけで一向に開く気配がない。
どうやら鍵が掛けられてるようだ。
「変なの、普段は開けっ放しなのに」
そう呟きながら、なのはは懐から合鍵を取り出し、それを使って鍵を開けて扉を開く。
すんなりと鍵は開き、扉は少女の手で抵抗なく開かれる。
中は全く変わってない。誰も居ない通路の奥に、これまた誰も居ない居間が見える。
「ただいま〜」
一言そう延べ、なのはは玄関で履物を脱ぎ、家へと入った。
入っては見たが、やはり何所か違和感を感じる。
しかし、この違和感が何なのかは未だに全く分からない。
「お父さん? 新八君? 神楽ちゃん?」
本来居る筈の人達の名前を声に出しながら、部屋の中を歩く。
だが、幾ら名前を呼んでも、声は返って来ない。誰も居ないのだろうか?
居間には勿論、台所や座敷などを見て回ったが、其処にはやはり誰も居ない。
一体何処へ行ったのだろうか。
そう思っていた時、寝室の方の扉が開く音がした。どうやら寝室に誰か居たのだろう。
振り返ると、其処に居たのは見覚えのある銀色の天然パーマを頂きに持ち、その風貌はやる気の欠片さえ感じられない。いや、居間の彼からはやる気どころか生気すらも感じられないようにも見える。
服装は黒のシャツとズボンの上に白い着物をだらしなく着こなしている。
紛れも無い。彼は銀時だった。なのはが父と慕い、赤子だった自分をこの年まで育ててくれた人物だ。
「お父さん! 帰ってたんだ」
懐かしさと寂しさが入り混じった声を挙げてなのはが銀時に近づき、声を掛ける。
だが、それに対して銀時は全く応じる様子を見せず、なのはから視線を逸らしてしまう。
「あ、あれ? お父さん!」
【あ〜、まぁたやっちまったよぉ〜】
なのはの声に一切気付く様子なく、銀時は天然パーマの髪を強引に掻き毟りながら玄関までのたのたと歩き出した。全くなのはに気付いていない。まるで、初めから其処に彼
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ