暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第69話 シャルロット
[10/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
た少女も。
 そして、俺と、俺の腕の中の蒼い少女も。

 すべて、溢れる光の中へ溶けて行った。


☆★☆★☆


 完全に破壊されて仕舞った夢の世界のオルレアン家の邸宅。
 完全にクレーター状となって仕舞ったむき出しの大地から顔を上げると、其処には蒼穹に顔を出す蒼き偽りの女神が花の(かんばせ)を覗かせて居る。
 そして、秋の夜長に相応しい風が、ラグドリアン湖の方角から吹き寄せて来た。

 俺の右隣には意識を俺から切り離した蒼き吸血姫(タバサ)が。
 正面にはタバサの妹らしき少女。但し、最早、出会いの時に抱えていた人間の頭骨は聖槍に因り、その形を構成していた物すべてが光の粒子として散じている。

「二人とも、身体は何ともないか?」

 俺の問い掛けに、無言で俺と、鏡に映るが如きお互いの姿を見つめた後、まったく同じタイミングで微かに首を上下させる二人。
 髪の毛。瞳の色。白磁の如き肌。少し低い目の身長。もしかして、俺の好みなのかも知れない体型。夢の世界に現れる際の衣装。

 凛とした立ち姿の中に、清楚な雰囲気と、そして硝子のように透明な儚さが存在している。
 その姿は正に双子。この世界が夢の世界で有る以上、この双子は、心の在り様まで似ていると言う事なのかも知れない。

 この二人の違いは、正面に立つ少女の右腕を飾る銀製の複雑な意匠を施された腕輪。そして、俺の傍らに立つ少女には、腕輪以外に、指輪、ネックレス、そして、ブローチなどの俺が贈った装身具がその身を飾る。

 安堵と、それに、まるで同期したかのような二人の動きに苦笑に似た笑みを浮かべる俺。
 但し、現状はそんな笑みで終わらせられるような甘い状況ではない。

「シャルロットは、もう現実の世界では正気に戻る事はないのか?」

 俺の問い掛けに、正面に立つ少女の方が微かに首肯く。そして、俺の右隣に立つ、本当のシャルロットの方は、何故かその呼び掛けに反応する事は一切なかった。
 どうやら、本当にタバサは、俺からシャルロットと呼ばれる事を想定して居ない上に、その名前を呼ばれる事を望んでもいない、と言う事なのでしょう。

 何故、其処まで拘るのか、その辺りの理由は判らないのですが。

「今のわたしは、自分が何処に居るのか。季節が何時なのかさえ判らない状態」

 俺の顔を見つめながら、そう話すシャルロット。その表情は真摯で有り、欺瞞が含まれて居る様子を感じる事はない。
 成るほど。それではどうしようもないですか。

「それなら、あの抱えていた人間の頭骨に関しては……」

 一応、そう聞いてみるのですが……。
 しかし、矢張り首を横に振るシャルロット。

 確かに、現実世界の彼女が正気を失って居て、その現実世界の彼女が手にし
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ