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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第69話 シャルロット
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、未だ彼女の意志が存在して居る事を信じて【念話】を送る俺。
 その視線の先には、タバサと闇の奥深くへと延びる因果の糸を昇り来る牛頭鬼と、それを阻止する俺の飛霊二体の攻防が繰り広げられる。

 しかし……。

【あなたには、彼女が居る】

 タバサの妹から、信じられないほど冷静な答えが返された。
 これは、あの時と同じ。ショゴスに捕らえられ、最早、すべてに絶望したかのような、諦めた者の答え。

 そして、

【ヤツを呼び出して仕舞ったわたしに、救われる値打ちなどない】

 すべてを奪われ、現実世界では精神さえも操られた、絶望を知る者の言葉が続けられる。

 但し――

【アホぬかせ。オマエが忘れているようやから、何度でも言ってやる】

 そもそも、気にしなくて良いと言われて、はいそうですか、と引き下がる訳がないでしょうが。
 何故ならば、この場から俺とタバサが逃げ出したとしても、ここがタバサの夢の世界で有り、おそらく彼女以外の人々の夢……精神の世界に繋がる空間でも有るはずです。

 そんな空間に、日本の神話史上最大の破壊神にして疫神、などと呼ばれる存在を野放しに出来る訳は有りません。

 まして、簡単に見捨てられる程度の関係の相手なら、ショゴスに完全に取り込まれた魂を掴み取る事が出来る訳は有りません。つまり、タバサの妹と言う以外に、彼女と俺の縁は、それだけ深い絆が有ったと言う事。

 そんな相手を見捨てられるほど、俺は強くは有りませんから。

【俺に命令出来るのはこの世でたった一人。それは俺自身だけ】
「タバサ、同期(シンクロ)、頼めるか?」

 分割思考で、タバサには実際の言葉にして、
 そして、タバサの妹。本当の名前は判らないけど、俺がシャルロットと呼び掛けると反応してくれる少女に対しては、【念話】で話し掛ける俺。

 そうして返される、異口同音の答え。

 タバサから繋がる因果の糸は、遙か地上に繋がる。
 その糸を伝わり昇り来る牛頭鬼たちは、俺の飛霊が対処して居るからしばらくは大丈夫。

 ならば!

 俺は、自らの腕の中に居る少女と視線を合した。
 俺の紅と黒。ふたつの瞳を自らの蒼きそれに映し、静かに首肯くタバサ。
 普段よりも澄んだ瞳で。ただ涼やかに、普段よりも濃い蒼の瞳で俺を見つめながら。

 そして、

「龍の巫女たるわたしが、あなたを導きます」

 勝利の託宣を告げる巫女のように静かに告げられるは、誓約の言葉。
 そして、その瞬間、再び眠れる美少女と化すタバサ。
 いや、今回は眠った訳では無い。完全に魂と魄を切り離し、今俺の腕の中に有るのは彼女の魄。そして、俺の分割された思考の中に確かに存在しているのが彼女の魂の部分。

 刹那、遙か闇
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