第5章 契約
第69話 シャルロット
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で、すべてを破壊し尽くすかのような嵐が俺の背後。丁度、魔術回路に阻まれた地点から後方に向かって発生した。
そう。何モノにも制御出来ない巨大な暴風にも似た破壊力が、それを放った何モノかにそのまま返され、自らの黒き巨大な腕を吹き飛ばし――――
現在、この夢の世界を支配している暗黒物質を震わせ、轟音が響き渡った。
これは、怒り。神話上でヤツに滅ぼされる定めを持つ俺が、ヤツに取っては無意味な反撃を行った事に対する怒り。
しかし……。
しかし、その咆哮により、俺の腕の中で僅かな身じろぎを感じる。
これは、間違いなく覚醒のサイン。
いや、もしかすると、俺の霊体が彼女の霊体に直接触れたから彼女の霊力が活性化した、……の可能性も有りますが。
「おはようさん」
彼女が覚醒した事を確信した俺が、そう話し掛ける。
彼女を胸に抱き、遙か上空へと退避を行いながら。
「おはよう」
普段通り、寝起きで有ろうとも変わりない落ち着いた状態の我が相棒の答え。
上空の有る一点に到達した瞬間、遙か下方から迫る旋風。
そう。須佐之男命とは本来旋風を統べる神。更に、現在、何故かタバサと須佐之男命は因果の糸で繋がっている状態。
この状態で、更に言うと夢の世界では、ヤツから逃げ切る事はほぼ不可能。
しかし――――
「我、世の理を知り、術を返す」
しかし、一瞬の空白さえあればタバサには十分。
短い目覚めの挨拶の後、一瞬の隙間に状況を理解し、術を構成するタバサ。
その瞬間、俺たちの周囲に浮かぶ対魔法防御用の魔術回路。その一瞬の膠着状態の後、すべて放った存在に返されて仕舞う。
「状況の説明は必要ないな?」
周囲に漂う牛頭天王の放って来た暴風と、タバサの講じた魔法反射の起こした霊力の残滓を感じ取りながら、腕の中の蒼き吸血姫に問い掛ける俺。
但し、これも所詮は確認作業。状況が理解出来ずに、行き成り的確に魔法反射の防御用魔法陣を構築出来たと考えるよりは、咄嗟に状況を把握した後に防御用の魔術結界を構築したと考える方が妥当でしょう。
「問題ない」
案の定、タバサは普段通りの冷静な答えを返して来る。
成るほど。ならば、もう大丈夫。彼女が完全に目覚めたのなら、後は、夢の世界にのみ顕現した疫神を、そのまま意識と無意識の狭間の世界に封じるだけで事が済みます。
そう。この状況で事を納めて置けば、タバサやその他の犠牲者たちを踏み台にして、其処から先に更に多くの犠牲者を疫病で失う可能性は少なくなる、と言う事ですから。
それならば!
【シャルロット、その頭骨を捨てられないのなら、出来るだけ身体から離せ!】
暗黒のヴェールの向こう側に
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