第5章 契約
第69話 シャルロット
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刹那の後に青龍戟が空を貫き、僅かに俺の側頭部の髪の毛を揺らすに止めた。
その瞬間、強烈に輝く蒼銀の光が牛頭鬼の左から右に引かれ、次の瞬間には首が跳ね飛ばされ、その黒き身体が塵へと変ず。
しかし……。
「彼の存在が顕われる前に、あなたにはここから去って欲しい」
黒き闇の向こう側から、再び彼女の特徴の有る、やや低音の聞き取り辛い声が響く。
その口調も、そして声音も普段のタバサのまま。
但し、何故か、その言葉の中に懇願するかのような心の動きを感じる。
間違いない。夢の世界の彼女は、何モノかは判りませんが、この事件を起こしている存在に心まで完全に操られている訳ではない、と言う事。
それにしても……。
それにしても、彼の存在か……。
その台詞を心の中で反芻するかのように呟いた瞬間、俺の表情は皮肉な笑みの形で歪んで居たのは間違いない。
そう、今宵。いや、おそらく、今の時間帯は、そいつが顕われるに相応しい時間帯と成って居るはずです。
長兄の太陽神の支配する時間帯でもなく、
次兄の月神が支配する夜でもない。
どちらが支配する事もない、偽りの月が支配する今宵こそ、彼の神。日本神話史上最大の荒魂。
――須佐之男命が顕現するに相応しい。
更に濃くなる闇。
俺の右腕が蒼銀に閃く度に。
生来の能力が発動され、閃光と轟音。そして、衝撃波が発生する度に。
最早、この場所はタバサの寝室を模した場所ですら無くなって居る。
そう。何処とも知れぬ暗い空間。上も下も。右も左も曖昧な空間に、結界に覆われた彼女の眠る寝台のみが茫と浮かぶ世界と成っていた。
牛頭鬼が上げる苦悶の響きが、威嚇の咆哮が、そして、消滅させられる怨嗟の響きがヤツを呼び寄せる。
「ええい!」
大きな声で悪態に近い声を上げる俺。
右から突き掛かる青龍戟を、表皮一枚犠牲にして後方へと流した瞬間に、自らを中心とした周囲に雷公の腕を召喚。
次の刹那には、右手に顕われた七星の宝刀により発生した剣圧が、接近中で有った牛頭鬼の分厚い表皮を切り裂き、世界を更なる暗黒に染め上げる。
このままでは。
このままでは、何時か俺が突破され、タバサの眠る寝台に施された結界が無効化される。
更に――――
「術に因りて飛霊を生ず、顕われよ!」
表皮を切り裂かれた事により発生した血液……。いや、ここは夢の世界で有る以上、これは俺を構成する霊気の塊。その霊気を媒介にして、俺自身の現身、飛霊を呼び出す。
但し、これは危険な賭け。剪紙鬼兵などのデッド・コピーならば、俺に返って来る返やりの風も軽度の裂傷程度に抑えられ
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