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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第69話 シャルロット
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りと……。本当にゆっくりと立ち上がって来る。その様子は昨夜、オルレアン屋敷に顕われた疫鬼たちと同じ。

 その新たに顕われたモノたちの姿形は……。

 たくましい男性を彷彿とさせる人型。身長はパッと見二メートル以上。上半身は裸で、衣服と言えば腰に布を巻き付けているだけ。其処に複雑な文様が施された腕輪と足輪。更にじゃらじゃらとした赤や青の細かい石に彩られた首飾りが胸元を彩る。正に豪華な仏像の如き装身具に身を包んだ存在。
 しかし、そんな事は大きな問題ではない。

 もっとも異常なのは、そいつらの頭部を飾る二本の角。双方が優美な弧を描き、天へと突き出していた。

「ミノタウロス。いや、ミノタウロスが青龍戟を持って居たなどと言う記述を目にした事はない。……と言う事は」

 まるで黒檀により削り出された彫刻の如き力強さと、そして優美さを持ち合わせる牛頭の異形のモノが、手にした青龍戟を無造作に振り上げ――――

牛頭鬼(ごずき)か!」

 振り下ろされる青龍戟の月牙と呼ばれる三日月状の刃を、一瞬の内に右手内に顕われた蒼銀(ぎん)の光で撥ね上げた俺が叫ぶ。
 蒼銀の軌跡が闇に直線を引き、巻き起こす旋風が……。しかし、薄い紗のカーテンをそよとも揺らす事はない。
 そう。これは先ほど描いた結界が効果を現したと言う事。

 しかし、牛頭鬼の月牙を撥ね上げたものの、その瞬間に俺は、そこに籠められた一撃の破壊力に恐怖を感じたのだった。

「あなたは、この夢の世界から現実世界へと帰還して欲しい。
 わたしと、そして彼女の事は諦めて」

 黒いヴェールの向こう側から、彼女の声のみが響く。

 しかし!

 右後方に跳びながら口訣を唱え、導引を結ぶ。
 その瞬間、轟然と振り抜かれる青龍戟。そして、それは一瞬前まで俺が存在していた場所を切り裂き、その凄まじいばかりの衝撃波が、しかし、タバサの寝台を取り囲む結界により再び阻まれた。

 刹那、眩いばかりの白き光が室内に閃き、轟音がオルレアン屋敷、いや、夢の世界を震わせる。

 そう。俺を示す行が支配する雷撃が周囲を無秩序に荒れ狂い、周囲を取り囲みつつ有った牛頭鬼が一撃で粉砕して行ったのだ。

「俺の事を心配してくれるのは有り難いんやけどなっ!」

 俺が叫んだ瞬間、先頭に立って接近して来た牛頭鬼は黒い塵のように成って消えて行く。

 そうだ。先頭の一体が青龍戟を構えた刹那、ヤツの眼前に閃いた蒼銀光。その一瞬の後に青龍戟を両断し、脳天から右脇に抜ける光の断線。
 但し、今の俺に、そんな一個の勝利に酔って居る余裕など存在してはいない。

「俺はタバサを連れて帰る。そして、オマエさんの事もどうにかする!」

 すり足で右に移動した俺が存在した場所を、その
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