暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第69話 シャルロット
[3/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 運命神……出会いの約束を捻じ曲げる程の影響力を持った存在ならば、それも可能でしょう。それに、俺とタバサや湖の乙女との出会いは、このハルケギニア世界に強い影響を与えて居る事は間違い有りません。
 何故ならば、今までに俺とタバサが関わった事件の内で、ひとつでも阻止する事に失敗していたら、この世界に与えた被害や混乱はかなり大きな物で有ったはずですから。

 その例から考えると、もし、俺と眼前の蒼い少女との出会いが創り上げる世界の在り様を都合が悪いと考える存在が居たと仮定したのならば、その出会いに何らかの介入が為される可能性は高いでしょう。

 しかし……。

「それでも、こうやって出会う事が出来た」

 それならば、ここから……この出会いから新しく始めたら良い。たった、それだけの事。
 そう考えて、右手を差し出す俺。

 しかし、ゆっくりと首を左右に振る蒼い少女。その拒絶の仕草には、大きな負の感情が籠められていた。
 そして、

「もう遅い」

 タバサと同じ口調、同じ声で、短くそう伝えて来る蒼い少女。
 その蒼い瞳には俺を映し、同時に深い憂いを浮かべる。

「既に、現実世界でのわたしの心が破壊され、今のわたしは抜け殻に過ぎない。
 もし、わたしがあなたに出会えたとしても、わたしには、あなたが傍に来てくれた事さえ理解する事が出来はしない」

 心が破壊される。彼女は確かにそう言った。ましてその状況ならば、彼女が俺を召喚出来なかったとしても不思議では有りません。
 そう。この世界にはギアスと言う精神を操る魔法が存在し、殺人祭鬼の連中のように薬物を利用した洗脳方法が存在する以上、それも……心を壊す事もおそらく可能。

 更に、タバサの母親も同じような状態に置かれていたのですから……。

「それに……」

 彼女が何か伝えようとした瞬間、蒼い月の光りに照らされていた少女の姿が急に見え辛くなった。
 いや、違う。その瞬間に彼女の手の中に有る頭骨から、何かが溢れ出して来て居たのだ。

 生臭い、気分が悪くなるような強い臭いが鼻を衝く。
 そして、其処から顕われた黒い何か。それは、俺の見ている間に影のようにタバサの寝室全体へと広がって行き――――

「我、陣の理を知り、大地に砦を描く!」

 刹那、口訣と共に導引を結び、タバサの寝台を中心に強力な防御結界を構築する俺。
 ここは夢の世界。故に、持ち物の呪符は当然として、肉体の方に施して有る仙術はすべて効果を発揮しません。

 いや、それドコロか自身が持つ式神使いの能力の行使も不可能。こんな不利な状況で、眠れるタバサを護りながら――――

 かなり悪い状況に軽く舌打ちを行う俺の目の前で、気味の悪い生き物のようにのたくる黒い影が、ゆっく
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ