第5章 契約
第69話 シャルロット
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うに繋がれたその手が、何となく彼女自身の今の感情を表現しているかのようで有った。
そして……。
そして、しっかりと繋がれた手をそっと離そうとして、目覚めた時から座ったままに成って居る椅子より立ち上がる俺。
その瞬間。
微かに洩れる吐息と、瞑られたままの瞳に僅かな変化。
そう。規則正しく上下動を繰り返すだけで有った薄い上掛け布団に、それまでと違う動きが。
それに、閉じられたままに成っていたまつ毛に微かな動きを感じる。
これは、明らかな目覚めの兆候。
立ち上がった椅子を、一歩分だけ余計に彼女に近付け、其処に再び腰を下ろす俺。
当然、繋いだままの右手を離す事もなく。
そしてその瞬間、俺の後ろに存在する彼女の寝室の扉がゆっくりと開いた気配を感じた後、
音もなく閉じられた。
ちょうどその瞬間。
部屋を出て行って仕舞った彼女と入れ替わるように、ゆっくりと瞳を開く蒼い少女。
繋がれたままの右手に、何故か安堵のような雰囲気を発した後、その先に存在している俺に視線を向けた。
「おはようさん」
手と手が繋がり、視線が絡まった後、先に朝の挨拶を行う俺。
この春の出会いから続けられて来た、何時もと変わらぬ朝の風景。
「おはよう」
そして、この一カ月の間交わされる事の無かった家族の朝の挨拶が交わされた。
本当に穏やかな朝の始まり。
そうして……。
「お帰りなさい」
本当は俺が口にすべき言葉を、タバサの方が口にした。
いや、彼女が今この瞬間に、この台詞を口にした理由は判ります。
俺はこの一カ月ほど、仕事で出掛けていましたから。
彼女の元から。
それならば、答えはただひとつ。
「ただいま、タバサ」
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