プロローグ
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「なぁ、ガンツ。こんなことして楽しいのか」
2階建てアパートの一室。そこにいるのは黒い男と黒い玉。
「なぁ、ガンツ。何のために俺は戦ってきたんだ」
壁に背を預け座り込む男の顔は泣いていた。声も出さず、目もどこか遠い所を見ているようで定まっていない。黒い瞳から流れ出る涙は止まることをしらなかった。
「なぁ、ガンツ。ここに俺は本当に必要なのか」
男の声は消えそうなか細い声だったが、何故か声はよく響いた。
「なぁ、ガンツ……みんな、何処へいったんだ」
定まっていなかった焦点が、黒い球体を射抜いた。だが、ガンツは、答えない。
「答えろ! ガンツ!」
ばねが跳ねたかのように立ち上がり、刀を突きつけた。無表情から一転、鬼も黙るような怒りの形相を浮かべた。方眼は猛禽類のように瞳孔が開き、もう片方は白目と黒目の色が逆転した。暗い部屋に黄色と白が不気味に浮かぶ。
それでもガンツは答えない。ずっと同じことを表示している。
ばけものちーと
411てん
Total502点
ひゃくてんめにゅ〜から選んでくだちぃ
「はッ、救えるのはたった五人かよ……」
文字が消えうせ、次にまた文字が浮かぶ。
男は失望した目でそれを見ていたが、何かに気づいたようですっと目が細められる。
「500点、メニュー……?」
その言葉に反応したガンツは、また文字を変る。それと同時に、細められた目は今度は逆に大きく、開かれることとなった。
500点めにゅ〜
1 超強力な武器を与えられる。
2 記憶ありのまま解放。ただしここでの事を話したら死亡。
3 別のガンツの地域へと飛ばす。ここでの記憶と武器は失われる。
「……ガンツ、もしかしてお前」
じじじっと、不快な音がする。何回も聞かされた転送の音。嫌で嫌で仕方が無かったが、今回だけは許せるなと思った。
いってくだちぃ
あぁ、いってくるさ。
転送が終わり、静寂だけが空間を支配する。怪しげに光るガンツの表面には、3番の選択肢だけが残された。そして、その文字も、ゆっくりと消える。
暗闇と静寂。両方が支配するこの空間で、ピシリッと何かの音が響き渡る。まるで陶器にひびが入ったかのような音。だが音はそれきりやんでしまった。
埼玉のとある2階建てアパート。その部屋に二度と来客が来ることはなかった。
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