第一幕その六
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第一幕その六
「今日はいい男を紹介致します」
「男をか」
「ここにおります若い男は」
ベルモンテだった。彼も静かにセリムに対して頭を垂れる。
「イタリアに学び太守様のことを御聞きし是非その建築の知識を生かしたいとのことです」
「若し宜しければ」
ベルモンテもイタリア人に化けて述べる。
「私めの拙い知識をお使い下さい」
「よし、丁度建築家が欲しかったところだ」
当然それを知ってのペドリロの策である、
「では部屋を一つ用意しておこう」
「有り難き御言葉」
(まずは上々ですね)
(そうだね)
セリムに迎えられたベルモンテはペドリロと囁き合いながら頷き合った。
(まずはコンスタンツェに会いたいけれど)
(やってみましょう。ですが慎重に)
(慎重にだね)
(そうです。壁に耳ありですから)
話している間にセリムは宮殿に入っていく。殆どの者がそれについて行くが二人はその場に残って話をしていた。だがやがて一行の最後尾で入ろうとすると。そこでだった。
「また御前か」
オスミンだった。彼はベルモンテを見て不機嫌そのものの顔を見せたのだった。
「まだいたのか」
「この人は建築家として採用されたんですよ」
ペドリロが陽気に主をそういう触れ込みでオスミンに紹介した。
「めでたくね」
「何がめでたいものか」
「おやおや、また」
今のオスミンの言葉にまた肩をすくめてみせる。
「そんなことを仰って」
「そんなこともあるものか」
オスミンはその大きな顔を思いきり不機嫌なものにさせていた。そのうえでの言葉である。
「貴様等キリスト教徒に限ってな」
「まあまあ」
しかしペドリロの態度は相変わらず飄々としたものだ。軽快な動作でオスミンの巨体の突進をかわし続けているようにさえ見える。
「気持ちを落ち着けられて」
「消えてなくなれこの悪党共が」
オスミンはその言葉を聞いてさらにいきり立つ。さながら闘牛場の牛である。確かに大きくいかついのでどうしてもそういう感じだ。
「さもないと鞭を浴びせるぞ」
「ですが私は太守様に御許しを頂いていますので」
「それは私もだ」
ベルモンテは咄嗟にペドリロに合わせて述べた。
「建築家として」
「そういうことで」
「イタリア人はパスタとワインだけを食っていろ」
この時代一応パスタはあった。マッケローニというフェットチーネを思わせる幅の広いものがナポリやローマで食べられていたのである。ただしかなり高価であった。
「そもそもイタリア人は皆女好きでいかん」
「それは偏見ですよ」
「そうだ」
二人はそれは否定する。あまり説得力はないが。
「ですから太守様から御許しを得ているので」
「ここは」
「くそっ、忌々しい奴等だ」
オスミンが地団駄を
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