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王道を走れば:幻想にて
第四章、終幕 その1:女修羅
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のか、アリッサは荒々しく返す。

「ば、馬鹿な事を言うんじゃない!私とケイタク殿がそんな、そんな仲な訳が無いだろう!?」
「それじゃぁさっき、どうしてケイタクさんの事、呼び捨てにしていたんですか?私が知るアリッサさんは、リコさん以外に対しては、誰であろうと敬称を付けて呼びかける人なんですけど」「そ、それはだな・・・」
「それに、どうも以前より、ケイタクさんの方に近寄ってる風に見えるんです。まるで恋人の距離ですよ。上司と部下の距離にしては、やけに近すぎだと思いますけど・・・」
「ふん。とんだ観察眼だな。当たりかどうかも分からんぞ」「アリッサさんの場合は分かりやすいです。いくら鈍い人でもすぐに気付いてしまう程ですよ?・・・何かあったのかを勘繰らない方がおかしいくらいです」

 キーラは俄かに椅子の後方に体重を乗せながら上目でアリッサを皮肉るように見遣る。不遜とも思える態度であったがしかしそれをするだけの理由があるのは確かであった。彼女は慧卓とアリッサとの間に『何か』があったと、感づいているのだ。その直感の根拠を問いただす事も可能であろう。しかし問えば問う程にキーラの視線は冷たく蔑んだものとなり、今後エルフ領内において、更には王国内においても距離を置かれる事になりかねない。心置きなく話せそうな同性の者であるだけに、アリッサは抗弁する事に抵抗を感じる。
 キーラの瞳は、事実の暴露を催促しているように光っていた。己の下手な演技では隠し事もできないと悟ると、アリッサは観念したように他所を見ながら閉口し、そして再びキーラを見詰めた。

「話すよ。どうか怒らないで聞いてほしい」
「・・・言って下さい」

 キーラは静かな表情を湛えた。それは難事を待ち構える菩薩のように穏やかであったが、しかしその裏に沸々とした激情があるのが透けて見える。アリッサは強大な魔獣に立ち向かうような震えを覚えたのか頬肉が緊張するのを感じつつ、ぽつぽつと、話し始めた。

「東の村に行っていただろう?私とケイタク殿とで」「ええ」
「その時、その、一時の気の迷いでな・・・ケイタク殿と、関係を持ってしまった」
「・・・」

 過ちの一つを告白する。キーラの表情から静けさが失われる事は無く、その瞳の確信めいた光はすっと消えて行き、心なしか冬の氷塊を彷彿とさせるような怒りが宿っていく。その細やかな乙女の変化は、懺悔を始めたアリッサが気付く程はっきりとしたものではない。後ろめたさから視線を合わせられぬアリッサは、相手の胸元の起伏に目を遣りながら更に己の罪を告白する。

「一度で終われば見過ごしたかもしれなかったが、しかしそれにとどまらなかった。盗賊を撃退する最中、ケイタク殿と私は事故で催淫薬を吸い込んでしまってな・・・馬の繁殖用に用いるもので、人間が使うと強烈に発情してし
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