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王道を走れば:幻想にて
第四章、終幕 その1:女修羅
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て厳しい口調で言う。

「・・・さて、命令が出た以上は奴等を止めねばならん。はたして誰が行くべきか。奴等を交戦する可能性が考えられる以上、ある程度武が立たねば話にならん。それに遺跡は白の峰を越えねば辿り着けん。となると、体力が無い者も候補には上がらんな。
 残念だが、私とユミル殿は駄目だ。私は王国の代表として此処に留まらねばならんし、ユミル殿はエルフからの信頼を勝ち得ており、十中八九、冬に備えての狩猟班に合流せねばならん。彼の狩人としての腕が、今のエルフには必要だ」
「私も採集班に加わるかもしれませんし、リタさんには負傷兵の看護がありますから、無理に頼めませんね」
「無論王国の兵らは警備があるから駄目だ。となると自動的に、ケイタク殿かパウリナ殿、そしてリコが残るが・・・」

 二人の視線が自然と慧卓に集まる。彼は頭を持ち上げてそれを確かめたくなるも、床に視線を投げたまま言う。その方が考えを落ち着いて話せそうだからだ。

「・・・俺は行けますよ。あいつとは、何か因縁みたいなものを感じますから」「一人は決まりだな。ケイタク殿、どうする?パウリナ殿やリコは連れた方が良いか?」
「・・・パウリナさんは、少し難しいかもしれません。先日の戦いで精神的に参っているそうですから、ここで無理を押し付けるのも憚られます」
「では、リコを連れていくと?」「ええ。男手が必要になるかもしれませんし、それに地図製作が生業というのなら、険しい道の歩き方を知っている筈です」
「そうだな。・・・まだ日暮れまで時間がある。今のうちにこの事を言っておけ。準備が大いに必要だとな」
「承知しました。早速行ってきます。それじゃ、キーラ。また後で」

 慧卓はそう言って立ち上がり家から出ていく。その際に、キーラに向けた視線が複雑なものとなるのは避けられなかった。
 どうにも動きづらいちくちくとした沈黙が出来上がり、アリッサは緊張を覚えておそるおそるキーラを見た。普段温厚で優しいキーラの瞳が、慧卓が去った中、冷淡な睨みを利かせて虚空の一点を見ていたのだ。この雰囲気から逃げようとアリッサは立ち上がる。

「では、私も失礼しよう。就寝前に一度、剣の状態を確かめておきたいからな」
「アリッサさん。まだ行かないでください」「ん?私に話が?」
「はい。とても大事な御話があります」「・・・わ、分かった。どんなものだ?」

 思わず構えながらアリッサは椅子に座り直し、正面からキーラを見詰める。いつも以上に力んでいる彼女の目元を見て、キーラはどこか確信したように小さな鼻息を漏らすと、至極落ち着いた口調で言ってのけた。

「・・・アリッサさん。ケイタクさんと何かあったんですよね?」「は、はぁっ!?」
「図星ですか、やっぱり」

 冷たく笑うキーラに心を大きく揺さぶられた
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