第四章、終幕 その1:女修羅
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なかった。
盗賊を撃退するために火計を行ったのだが、彼らは戦線を保つために最後まで最前線に居たせいで、逃げるのが遅れた。背中が炎の焼かれて、逃げる間際に盗賊に斬られたのだ。見つけた時にはもう、手の施し様が無かった」
「・・・彼らは、己の職務を全うしたのだな?そうなのだな?」「ああ。彼らは最後まで兵士だった」
「・・・そうか。あなたは大丈夫だったか」「ああ。戦功を幾つか挙げてな、今ではエルフが一目置かれる存在だ。お前等と同じだよ」
励まさんとばかりに態と気取られた口調でユミルは言う。アリッサが小さく笑みを零したのを聞いた後、彼は引き締め直した口調で告げた。
「アリッサ殿。帰還して早々すまないが、イル=フード殿とニ=ベリ殿が御呼びだ」
「そうか・・・しかしニ=ベリ殿だと?なぜここに?」「救援のためだ。盗賊と交戦したその半日後に、軍隊を率いて彼が来たのだ。今この森は二人の賢人が共同して治めている」
「・・・成程。詳細は向こうで聞いた方がよさそうだ。ケイタク殿」「はい」
「私は先に失礼するが、パウリナやキーラ、それにリタとリコに宜しく伝えておいてくれ」「分かりました」
アリッサは立ち上がり、物言わなくなった仲間を暫し見詰めた後、踵を返して立ち去る。慧卓はユミルの方に向き直りながら問う。
「皆は大丈夫なんですか?」「ああ。リタとリコは初めから退避していたし、キーラも戦場に立っていないしな。パウリナはまぁ、気を失っているが大丈夫だ」
「気を失って!?」「血を見てな」「嗚呼・・・前より悪化してませんか?」「いや、あれは俺でもショックだったぞ・・・。身体がまるで車輪によって引き伸ばされたかのように散らばったやつでな」「うぁっ・・・」
轢死体というやつだろう。チャリオットなど流石に戦場に持ち運べないだろうから、大方もみくちゃとなっている最中に多くの者達に踏み潰されていくうちに、躰がペースト状になってしまったという話なのだ。足元に目がいき難い状況だ、さぞその者は苦しんで死んだ事だろう。心よりの同情を慧卓は抱いた。
ユミルは入口付近の壁に背を凭れさせて言う。
「実を言うとな、王国から遣いが来たのだ。パックを覚えているか?」「ええ、あの甘党の。まさか一人で来たんですか。よく無事でしたね」
「全くだ。しかも恐ろしい事に、先日の戦いでは怪我を全く負ってない。ぎっくり腰になりかけただけで済んだらしい。あれは長生きするぞ」「戦場のぎっくり腰・・・」
「それはそうと、あいつから調停官宛の書簡が預かっている。恐らく執政長官からのものだ。なるべく早いうちに読んでおけ」「分かりました。それはどちらに?」「お前の部屋だ。家は無事だぞ」
慧卓はそれを聞いて自らが留まっていた家へと向かう。何度も夜を明かしたその場所に上がり、どこ
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