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王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア:召喚とは
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界に来たんです!認めたくないんです。今まで全く想像してこなかった世界で生きれるっていう可能性を、たった一度の決断で捨てるだなんて。それこそ、星と星がぶつかって新しい光が生まれるよりももっと少ない確率で、俺は『セラム』に来ているんです。そんな夢のような奇跡を一度手にしたくせにすぐ尻尾を巻いて帰るだなんて・・・そんなの勿体無いです!まだ見た事もない人や動物や、魔法があるかもしれないのに、帰るなんて出来ません!
 来訪の形はどうであれ、俺はこの世界にケイタク=ミジョーとして生きてみたいんです!自分にとって出来る事を、全部やってみたいんです!その後で堂々と、俺は元の世界に帰るとします!!」

 そう高らかに宣言した慧卓の目に、曇りや迷いなど微塵も感じられなかった。全て彼の本心から言われた言葉なのだ。
 コーデリアは惚けたような、呆れたような表情を取ってしまい、またも無意識にこう思ってしまった。そうだ、彼は小難しい言葉を話す事はあるが、基本、一人の馬鹿正直な青年なのだ。自分に嘘を吐くのが苦手で、目の前に広がる魅力的なものには飛びつかないでいられない、そんなどうしようもない青年なのだ。ロプスマで祭りをしたり、風吹き村で酔っ払って変な行動に出たのも、ただ単に彼が愉しみたいだけなのだ。

「・・・呆れた。欲望塗れね。だらしない哲学者みたい」
「まぁ、本当はただ、愉しみたいだけかもしれないですね。こっちの料理とか、自然とか、文学とか、歌とか!故郷の人達には心配を凄くかけてしまうかもしれないけど、でもねぇ・・・やっぱり見過ごせないんですよ。
 ・・・俺、本当に欲望塗れな事を言い過ぎてました?」
「言っている事が幼稚染みてるし、ロマンとかに走り過ぎ。ちょっと痛い気もしたし・・・よく恥ずかしくなかったわね?」
「ぐぬぬっ・・・」
「なにがぐぬぬよ・・・馬鹿なケイタク、ふふ」

 コーデリアはくすくすと笑みを零す。真面目に考えた自分が馬鹿みたいだ。

「まっ、いいか。貴方の奥底にずっと眠っていた本音が顕れたんだし。・・・すっきりしたでしょ?」
「超すっきりしたよ」
「あらそう?元気そうで何より」

 慧卓の若々しき顔に出た爽快な笑みを見て、コーデリアは安堵を喜びを覚えた。慧卓が異世界に帰らないという事に感情が揺れ動いている。彼の存在が自分の中で大きくなっている事を再び自覚したが、不思議と悪い気はしなかった。彼ならばと、寧ろ安心する気持ちさえ出てくるのだ
 などと考えてはいられない。彼の決心に応えねばと、コーデリアは崩れた口調を取り繕い、再び王女としての自分を飾った。

「さて、ケイタク様、これで貴方の心が分りました。それにお応えして、叙任式が終わりましたら契約を結んでいただきます。召還の器に、貴方の決意を刻むのです」
「・・・分りました。
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