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王道を走れば:幻想にて
幕間+コーデリア:召喚とは
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 そんな的外れとも思える考えが頭に過ぎった途端、胸のざわめきがずきりと弾むのを感じて、コーデリアは内心で大いに驚く。目前に居る青年に対してここまで動揺するとは予想だにしていなかった。心を揺さぶってくるほどにこの青年は自分の中で大きくなっていたのか。王女としての悩みも、痛みも、分かち合ってすらいないのに。
 自分でも訳の分からぬ胸の痛みを感じていると、慧卓が遂に心情を吐露する。その表情は物憂げであり、どこか遠い人を想うような寂しそうなものであった。

「正直言ってまだ分からない事ばかりで、俺、今どれが一番最適な行動か分らないんですよ。でも多分、というか確実に、身体が無事な内に、元の世界へ戻った方が良いんだと思います。
 俺は唯の平凡な青年ですから、帰れば何の危難もなしに、平和な日常を謳歌できる筈です。俺にとって生き易い環境が整っていて俺を庇護してくれる人達も居るから、そうした方が良い。生半可な知識や経験でこっちの世界を生きても痛い目を見たり心を傷つけてしまったり、或いは此方の人々を知らず知らずの内に侮辱してしまうのは明白。だから恥を晒さないうちに身を退いた方がいい。・・・答えなんて明白ですよ」
「・・・そう、ですか」

 慧卓の答えはどこか予想できたものであった。それはそうだ。彼はいわば事故に巻き込まれたような立場なのだ。元の生活に戻れるならその選択を選ばないなんて、有り得ない話だ。
 そう思うと同時に、不意に湧いてくる大きな寂寥感によって、表情が曇ってしまう。矢張り自分は彼に、好意的な感情を持っていたようだ。生まれながら王女となった自分の苦境と、突然知らぬ場所へと飛ばされた彼の懊悩を、自覚の無い所で重ね合わせていたのか。自分でもよく分からない。だがここで彼と別れてしまうのは酷く惜しい気がして、そして悲しい思いを抱いてしまう。
 俯いて暗い地面を見詰めたコーデリアに、慧卓は決断の言葉を述べた。

「俺、こっちでも生きてみたいんです」
「・・・え?」

 ーーーどうして?

 全く予想していなかった質問に、コーデリアは無意識にそう口走っていた。頭に理解が及ばず、ただただ疑問だけが満ちる。どうして自分にとって最善である筈の安全策を取らないのか。同世代の男性の中では群を抜いた優しさのある青年なのだ。きっと異世界も清らかで安寧に満ちている筈なのに、どうしてそこへと帰らないのか。
 困惑しきったコーデリアの表情を見て、慧卓は苦笑交じりに言う。

「まぁ、そんな反応になるのも無理はないですよね。変な偶然が重なって、別の世界に足を着けている。本当なら今、故郷に帰ってもいいかもしれない。いや寧ろそっちの方が人として正しい選択なのかもしれない。此処が故郷よりも危険で、冷たい世界だって知っているから。
 でも、折角こんなに真新しい世
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