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剣風覇伝
第十四話「因果」
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。力が恐ろしいほど強くなり、軽い催眠術を操り、壁を歩き、影が鏡にうつらず、狼や鼠に変身もできることを知った体を大きくも小さくもできることも知った。いきなり大きな力をもった人間は、それを使ってみたくなる。あの伯爵がどうして自分の力で町だけでなくほかの国をも奪い支配しなかったのか、なにも考えずに彼らは隣やその向うの町にまで手を出した。その結果、世にヴァンパイアがはびこるようになるがそれはずっと後の話だ。そうして力の限りを尽くした町民たちはしだいに大きな軍事力の強い国ににらまれ、銀の武器と日の光を集める兵器で皆殺しの目にあった。どうにか伯爵の城に潜んでいた非暴力を主張した女たちと少数の町民は助かったが、それから後、彼らは伯爵の本当の苦しみを知ることになる。死ねないということだった。百年たっても二百年たっても死ねない。だがこの城を離れる勇気もない。だが飢えには勝てない、血を求めて旅の人間やほかの町に忍び込み、血を吸うのだ。
 もう、黒死病(ペスト)にはかからないが死ぬこともできない、永遠に人に忌み嫌われ闇から闇へ生きていくしかないのだ。そして時代は変わっていっても彼らはひっそりと今も闇に生きている。
そうルシアは病床に苦しむなかでこの人間たちを見て、いずれはこうなると分かっていたのかもしれない。
「そう、でも私は奴らと同じ様にはならない、父さんも奴らと同じようにはしない」
タチカゼは、心のどこかであの言葉の意味を繰り返しながら荒野を彷徨うように歩くのだった。

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