第十三話「神託」
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
少しずつ永久の時間の中、母と娘を一度に人間から奪われた憎しみで壊れていく前に父さんを救おうと思ったのよ!ねえ、本当に父をあなたは救えるの!?もしわずかでも自分に自信がないなら、もう私たちを放っておいて。私は父に最後を言い渡す。私の死の宣告は絶対にして確実よ、私は父に音もなく安らかな死を与えることができる。そしてあの世で一生誰にも害されることなく父を母と再会させ、その時こそ、私は死神の任を解かれ、私は父と母の元に帰る」
「そんな、そんなことが」
「これで分かった?あなたが生き返ったのはたぶん、あなたには別の使命があるからよ。そしてあなたを私たちに引き合わせたのはたぶん、あなたに知ってほしかったのだと思う。あなたが人間の英雄として生きるなら私たち、人間の敵である魔族にもけっして良心がないわけじゃないということを」
「だが、俺は、俺は!」
「やはりね、あなただって迷いがある。ならお願い、私たちを放っておいて。わたしは父に死を与えにゆくわ、でもありがとう。一瞬だけでも私は人間に希望を持つことができた。あなたがもしこれから今抱いてる迷いを一生抱いて自分の人生を進むのならあなたはもしかしたら偉大な人になるかもしれないわ」
「ルシア、待ってくれ!こんな終わり方はあんまりだ。おまえの言うことが本当なら神はなぜ君たちをこの世に誕生させたのだ」
「その問い方を多くの人間が神にする。私もそう何度も神に問うた。何故と、何故私たちをこの世に産んでおいて、こんなにも苦しめるのかと、だけどね、その逆だってあるこの世に産まれなければ、苦しみもないが、喜びというものも味わうことはない。私たち家族はそう、ヴァンパイアと人間だけどその垣根を越えて結ばれ少しの間だったけど確かに幸せなときもあったのよ?父が奪い去ったこの町の女たちも町で暮らしてたころはいろいろ悲しみや喜びがあったでしょう。でも父はそんな女たちから人間である喜びは奪ったがヴァンパイアとしてどう生きるかの自由は奪わなかったわ。望むものには教育も施したしけっして惨めには扱わなかった。彼女たちは今では父の傀儡に成り果てたけど、その前は私や母や父にさえ笑顔を見せてくれたわ」
ルシアはもうすでに立ち上がって城の方へと歩いている。今ではもう失っていた深い覚悟も蘇らせて、その口から出る言葉はかえって道を見失ってしまったタチカゼに送っているようだった。
タチカゼは、ルシアを追っていくことができない。足も心もルシアを追うにはまだまだお前は浅はかだと宣告しているようだった。
それを見た死神色に染まったルシアの顔は少し笑みを帯びて、そしてその大鎌は、城へと繋ぐ道を一振りで破壊した。破壊された道の底は闇がうねっている。
「あなたはこれを越えられない、これは死神だけが使える技、この大鎌が断ち切ったものはすべてあの世とこの世の隔たりを与え
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ