第五十七話
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飛翔しろと言っている。
「仮想の骨と筋肉が伸びてると仮定して、肩や背中と翼を連動させて!」
普段ならば何を言っているのか解らない、と呆れるところであるが、彼女が今言っていることは確実に《随意飛行》のコツだ。
補助コントローラーが焼き尽くされた今では、随意飛行を身につけなければ墜落することは確実だ……!
リーファに言われた通り翼に力を込めると、先程まで補助コントローラーで動いていた翼がピクピクと動き出し、徐々にではあるが翼のように始動すると、弦楽器のように翼が音を慣らし始めた……飛翔する準備が整った証拠の音だ。
しかし着実に大地は迫って来ており、俺の頭上には思ったより速く復活した、先程頭を二回蹴りつけたサラマンダーが突撃槍を構えていた。
「後は思いっきり、飛んで!」
「……筋肉を自在に動かすなんて……簡単な技術だろうっ!」
自身を鼓舞する意味を持った叫び声を上げると、地面スレスレでホバリングするように翼が動き出し、その後にコントロールをする暇もなく飛び上がった。
頭上で突撃槍を構えていたサラマンダーと視線が交錯し、突きだされた槍を片手剣で斬り払うと、攻撃する暇もなくサラマンダーを通り過ぎた。
確かに速度は跳ね上がったもののコントロールは難しく、飛翔しているというよりは翼に振り回されている、といった方が今の俺の状態は正しいか。
「だけどな……」
もはや刃がすり減って限界を迎えている片手剣を投擲し、サラマンダーの左手に握られていた補助コントローラーを弾き飛ばし、サラマンダーも空中でのコントロールを取れなくなっていた。
「……お前に向かって落下することぐらいは出来るさ!」
細かいコントロールは効かないものの方向を指定することはでき、今まさに飛び上がった地上へと進路を向け、サラマンダーへとのしかかった。
飛べなくなったサラマンダーは重力に従って墜ちていき、そのまま俺が上から押しているため、サラマンダーはそのまま地面に押しつけられた。
サラマンダーの重装備がエアバック代わりになって俺にダメージはないが、上下に押しつけられたサラマンダーはたまらずHPを全損させ、《エンドフレイム》が地面と共に俺を迎えた。
死んだ証とはとても思えない赤色の光に包まれながら、俺は再び飛翔する為に翼を展開し、大空を仰ぎ見た。
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