第九章 双月の舞踏会
第四話 自由騎士
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視線の先の士郎は、微かに俯かせた顔を片手で覆っているため、どんな顔をしているか分からない。
「シロウさん?」
不安に揺れる声で、再度士郎に問いかけるアンリエッタの目に、笑みをたたえた士郎の顔が映る。
顔に置いた手を髪をかき上げるように動かした士郎は、顔を動かし横に立つルイズを見下ろす。
「いいか?」
「っはぁ……分かったわよ。いいわよ好きにして」
士郎の問いに、ルイズは何がと問うことなく疲れたような溜め息を一つすると、小さくコクリと頷いて見せた。
ルイズからの了承を受け取った士郎は、所在無さげな様子で身体をもぞもぞと動かし、不安気な顔を見せるアンリエッタと向かい合う。
「あの、その、それで」
「報奨の件だが」
「ッ!」
アンリエッタは自分の問を遮るように口を開いた士郎の言葉に息を飲む。
ゴクリと喉を一つ動かしたアンリエッタは、士郎の次に続く言葉をじとりと汗が滲む身体で見つめる。
「受け取ろう」
「ッ!! あ、は、はい! ありがとうございます」
士郎の言葉を受けたアンリエッタが勢いよく頭を下げる。
「報奨を受け取ってもらってお礼を言われるとは……しかし、本当にいいのか?」
頭を下げる喜びを露わにするアンリエッタの姿に、苦笑いを浮かべた士郎だったが、直ぐにそれを消すと低い声で問いかける。
国に害をなすかもしれないと、ただの男をそこまで信じてもいいのか、と。
「……構いません。シロウさんがいなければ、トリステインは無事ではなかったでしょう。救国の英雄に対する報酬にしては少ないと言っても過言ではないです。……それにあなたは約束を守ってくれました」
「約束?」
首を傾げる士郎に向かって、アンリエッタは信頼しきった笑みを向け。
「だから、わたくしはあなたを最後まで信じます」
柔らかく囁いた。
日の光が窓から差し込み、殺風景な執務室の中を照らす。
白を基調にした執務室の壁に光は反射し、執務室の中は明るい。
そんな中に、差し込む陽の光を遮り生まれた三つの人影があった。
三つのうち一つは、少し離れた位置で、残る二つの影を見つめているようであり。
三つのうち二つは、片方から伸びた影が、低い影に橋のようにつながっていた。
「我、トリステイン女王アンリエッタ、この者に祝福と騎士たる資格を与えんとす」
広い執務室の中に、朗々と若い女性の声が響き。
「高潔なる魂の持ち主よ、比類なき勇を誇る者よ、並ぶものなき勲し者よ、汝の魂の在り処、その魂が欲するところに忠誠を誓いますか……」
虚空に吸い込まれていくように消えていく。
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