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後宮からの逃走
第二幕その七

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第二幕その七

「まさか」
「ひょっとして」
「そんなこと・・・・・・」
 コンスタンツェはその言葉を聞いてすぐに泣き出した。ブロンデに至っては。
「手、ね」
「そう、手を」
 ペドリロに対して言いペドリロも言葉を返す。
「まさか」
「こういう手ならあるわよっ」
 これがブロンデの答えだった。自分の右手で思いきりペドリロの頬をはたくのだった。これは痛かった。
「痛いっ、何をするんだ」
「わかったでしょ」
 怒った顔で自分の頬を押さえるペドリロに対して告げる。
「これでね」
「よくわかったよ、これでね」
「それでいいわ」
「悪魔にかけて」
「私は。そんなことは」
「大丈夫なんだね?」
 コンスタンツェとベルモンテも二人は二人で話し合っていた。コンスタンツェは涙ながらにベルモンテに対して答える。その涙がブロンデの手になっていた。
「それは」
「あの方は私を乱暴にしなかったし私はずっと貴方のことを想っていたわ」
「それじゃあ」
「そうよ」
 それが答えであった。
「何もなかったわ」
「潔白なんだね」
「潔白よ」
「何であんなのに手をつけられないといけないのよ」
 ブロンデはまだ顔を膨らまさせていた。
「冗談じゃないわよ」
「そうなんだ」
「そうよ」
 またペドリロに対して言う。ペドリロは小さくなってしまっている。小柄なブロンデよりもさらに小さく見えてしまうようにまで小さくなってしまっている。
「これでわかったわね」
「うん、よく」
「わかればいいのよ」
「これからは疑わないよ」
 必死にそのブロンデに謝るペドリロだった。
「御免、本当に」
「済まない」
 ベルモンテもまたコンスタンツェに対して謝罪していた。
「君のことを一瞬でも、微かにでも疑ってしまって」
「私が見ているのは貴方だけ」
 心に偽りがないからこその言葉であった。
「それは覚えておいて。永遠に」
「うん。もう二度と君を疑わないよ」
 今そのことをはっきりと誓うベルモンテだった。
「絶対にね」
「それなら」
 彼の心からの誓いを聞いて赦すコンスタンツェだった。何はともあれ二人の純潔は証明され赦しもあったのだった。
「ではこの件は終わりということで」
「ええ」
「それじゃあいよいよ」
「逃げましょう」
 四人はすぐに脱出にかかった。そうしてあれこれと動きだす。何はともあれ再会を果たし後は逃げるだけであった。

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