自動人形
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「もう帰っていい?」
読んでいる途中の原稿用紙が横から水瀬君に抜き取られた。
「あぁ、もうちょっとだけ!」
今かなり重要なところだった!てか狙ってやってるんじゃないかな?
「あっそう、じゃあ今日は貸すから明日感想聞かせてくれよ」
「うん、ありがと」
ユウキと分かれた後、図書室の前で本を返却して帰ろうとしていた依都子ちゃんに会い、水瀬君が三十分ほど前に図書室を出て市立図書館へ向かったと聞いて急いで追いかけて来た。そして市立図書館の個別ブースで原稿用紙と睨めっこしている水瀬君を発見し、偶然を装い近づき今に至る。
端折り過ぎ?確かにそうかもしれない。でも読ませてもらうまでにいった言葉を公にする気は無いんだ。
「じゃあな、綾文」
水瀬君は荷物を整えると僕に軽く手を振り、帰っていった。そしてすぐに姿が見えなくなる。
ん、あれ?何か忘れてるような??
「ん〜〜〜」
ま、いっか、どうせ大した事じゃないだろうし。
とりあえずこの原稿の続きを読むほうが先だな。
気合を入れて原稿に目を落とすと……
♪〜〜♪〜〜♪〜〜♪〜〜♪〜〜
閉館を知らせる音楽が流れた。
うん、帰ってからでいいかな。
「い・い・わ・け・な・い・で・しょ!!」
またか……今日は”またか”が多いな。
「耳をそんなに強く引っ張るなよ、千切れるだろユウキ」
いつの間にか真横に立っていたユウキに囁く。
「あやが怠慢な態度をとるからよ」
そんな理由で耳を失いたくない。
「仕方ないな、じゃあ続きは屋敷で読むよ」
この時間は図書館に人気が少ないけどユウキは見た目が目立ってしょうがない。
あぁ、中学二年生で帰宅拒否なんて僕って不良だな。
「そうね、それなら近いし」
はぁ行きたくないな。
人形屋敷
今から僕達が向かう屋敷は町の人々からそう呼ばれている。
理由は簡単、その屋敷には国籍を問わず、あらゆる人形が飾られていて余りにも不気味だからだ。
元々は都会の資産家がこの町で新しくビジネスを始めようとして建てた屋敷だったんだけど完成して数ヶ月でその資産家は病により亡くなり、身内も居なかったらしく、その屋敷の引き取り手のが現れなかった。
結果、町はこの土地を利用するため屋敷を取り壊す事にしたのだが工事の度に土木関係者が行方不明になるという事件が発生して中止された。その屋敷にはその資産家の趣味だったのか大量の人形に埋め尽くされており、その後の怪談のネタになっていて、肝試しにも使われていたんだけど、今では老朽化が進み、いつ崩れるか分からないので近づく人は居なくなった。
というホラ話で有名な屋敷だ。
実際はとある世界で唯一人の人物の別荘で、普通の人が入れば人形の館で、その主
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