崑崙の章
第8話 「ともあれ、大儀であった!」
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点を気付かせちゃったか。
やっぱ余計なこと口走ってしまったかもしれない。
とはいえ、それは新興の桃香にとっては後ろ盾を得ることにもなるからありがたいかもしれないが……
いろいろやっかいな問題もありそうだな。
「と、とりあえず私からも劉備に書状を書きましょう。劉備には私の臣がついておりますので、彼の者にまかせればよく計らってくれると思います」
「なに? お主、劉備に仕えておるのに臣を持っておるのか?」
「は? はあ……どういうわけか私個人を慕ってくれるものがおりまして。才能もあるので劉備の軍師として残してきております」
「なんと……お、お主、いっそ儂に仕えぬか?」
突然何言ってくるんだ、このじじい。
「いや、あの……劉表様?」
「……あ、すまぬ。そんなことをすればいらぬ誤解を受けるな。儂としたことが愚かなことを言った。許せ」
「は、はあ……」
これから親交を持とうという相手の臣引き抜こうとか、なにをボケたことを言い出すのかと思った。
意外に考えなしなのかな、このじいさん。
「そうか。劉備には力のある臣が大勢ついているようじゃな……うらやましい限りよ」
そう言って自嘲するように笑う劉表。
……このじいさん、猜疑心が強いから信頼できる部下があまりいないのかもしれないな。
黄忠さんもいなくなるし……少し焦っているのかもしれない。
「……私は劉備に拾われました。ですので、彼の者を裏切ることは出来ません。ですが、その劉備と同姓であられる劉表様は、劉備の遠い親戚でもある方です」
まあ、劉姓なんて自称もあるだろうから本当に親戚かどうかなんてわかりはしないけどね。
でもここはそれで通してしまおう。
「その劉表様にはこの度、多大なご温情を受けました。その私に劉備との橋渡しを任せていただくのであれば、私自身喜んでお手伝いいたします」
「お、おお! そう言ってくれるか!?」
「はい。劉備はまだ成り上がりの新参者です。劉表様のような思慮深く、聡明な方と昵懇にしていただけるのであれば、劉備にとっても望外の喜びでしょう」
「そうか……うん。わかった。お主には儂と劉備の橋渡しを任せたい! 頼りにしておるぞ!」
「はい。ありがとうございます」
……あれ?
よく考えると、なんでこんなに劉表に見込まれてるんだろ、俺。
……まあ、いいか。
「ふふふ……しかし、劉備を裏切ることは出来ん、か。本当に惜しいのう……」
なんかブツブツ言い出す劉表。
なんとなく背筋がゾワゾワするな……変な趣味だったらどうしよう。
「ともあれ、大儀であった!」
劉表のその一言で、謁見は終了した。
―― other side 白帝城 長江の
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