暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
番外編 「お母さんの味は・・・」
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ことを考えていたのだろう。もしくはMOTTAINAI思想というのが働いたのかもしれないが、とにかく最低でも一口は食べてみなければという得体の知れない責任感が彼女を縛っていた。

英語圏には“ファーストペンギン”という言葉がある。危険を承知で海に飛び込み他のペンギンが海に入るきっかけを作る一番槍のペンギンを揶揄していう言葉で、転じて一番最初に足を踏み出す勇気ある人の事を差す。セシリアは、そのファーストペンギンになる勇気がどうしても絞り出せなかった。
延々と食べようとし、そしてやはり勇気が足りずに皿の上に戻してを繰り返す回数が2ケタに届こうとしたその時、ふと誰かの視線を感じたセシリアは後ろを振り返った。

「・・・べ、ベルーナ、さん?」
「・・・・・・」

後ろにいたのは同じ一組の生徒、ベルーナ・デッケンだった。セシリアとサンドイッチを交互に見ながら小首をかしげているその姿は歳不相応に幼く見える。
セシリアは戸惑った。何を隠そう彼女はベルーナと話をしたことがないのだ。会ったのは自己紹介の時とアリーナの一件で姿を見た程度。どちらも1対1の対面ではないし、言葉を交わしたわけではない。たった今彼にかけた言葉がセシリアとベルーナの真のファーストコンタクトなのだ。

「そ、その・・・何か御用でも?」
「・・・・・・そのサンドイッチ、食べないの?」
「えっ?え、ええっと・・・その、ちょっと味に自信がなくてですね・・・」

自分でも分かるほどぎくしゃくしながらなんとか返答を返す。ただ単に初対面の人間ならこうはならないのだが、さすがにこんな光景をまじまじと見られるのはセシリアにとって非常に恥ずかしい事だった。ベルーナはその言葉を聞いた後、おもむろにこんな質問をしてきた。

「・・・食べてみても、いい?」
「へ?・・・ええー、その、だから味に自信が・・・」

そう言った所で突然、きゅぅぅぅ、という可愛らしい音がなった。音の発生源は・・・おそらくベルーナ少年の腹の虫。軽くお腹をさすったベルーナは、改めてセシリアを見る。女性の中でも比較的身長が高めなセシリアと身長低めなベルーナが向かい合えば、必然的にベルーナは彼女を見上げるために上目遣いになる。唯でさえ幼い印象を受けるベルーナにそんなことをされては、さしものセシリアも小動物を裏切るような罪悪感が湧いて容易には拒絶できない。

「・・・駄目ですか?」
「え、えぇぇ〜・・・?あ、あー・・・分かりました!どうぞ好きなだけお食べ下さいまし!」

あからさまに空腹を訴えるベルーナ少年に根負けしたセシリアは半ばやけくそ気味にサンドイッチの皿を差し出した。正直不安で仕方がないが、考えようによっては他の人に客観的に味を見てもらえるチャンスだからいい機会と言えなくもない。
必死に自己正当化を図るセシ
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