第一幕その一
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第一幕その一
後宮からの逃走
第一幕 後宮の前で
オスマン=トルコの領土であるチュニス。かつてカルタゴがあったこの場所にその巨大な宮殿はあった。丸いアーチ型の白い建築はそれがイスラムのものであることを知らしめている。ウィーンでの戦いに敗れたとはいえまだまだこの国は巨大なものであった。
その巨大な国の巨大な宮殿の前に一人の若者がいた。絹の青い服とズボンには白いフリルがありそれが彼が欧州の貴族であることを教えていた。端整で彫のある、それでいて明るく笑顔が映えそうな黄金色の髪に青い瞳の青年だ。鼻も立派であり顔立ちにも気品がある。彼は今実際に笑顔でその宮殿の前にいた。周りにはいちぢくの木々が茂りそこには実がたわわに実っている。しかし彼は今はそれは見ずに宮殿のその壮麗な、金と銀で飾られた門の前にいるのであった。
「やっと辿り着いた」
彼はまずこう言った。
「コンスタンツェはここにいるんだ」
次に女の名を口にした。明るく澄んだ高い男の声で。
「神よ、まずはここまでお導き下さり有り難うございます」
己の神に対して礼を述べた。
「そして次は愛しのコンスタンツェを。どうか」
言いながら少しずつその門にさらに近付く。
「もう一度僕の手に。憎きトルコの海賊達にさらわれここにいる彼女を。どうか」
しかしだった。その大きく堅固な門を見て彼は呟いた。
「しかしどうやってこの宮殿に入りコンスタンツェを救い出そう」
そのことを考える。しかしこの門をくぐる方法さえわからない。彼が考えあぐねているとそこに。イスラムの白をメインに所々が赤や青になりターバンを巻いたやたら大きな黒人の男を見た。見ればその顔は髭だらけでしかもその身体はかなり太ったものであった。
「誰か来たな」
「心の底から惚れているような可愛い娘がいたら」
「歌っているな」
その黒人を見て言う。彼は籠を背負っておりそこにいちじくを摘んで入れていた。そうしながら明るく歌っているのだった。
「何度でもキスをして人生を楽しくやることだ。優しく相手になることだ」
「あの」
彼はその黒人に声をかけた。
「宜しいでしょうか」
「だが女の操は当てにはならない。鍵をかけて家にしまっておこう」
彼の言葉を聞かずに歌い続ける黒人だった。
「浮気の花は蝶と見ればその気になり珍しい酒と見れば飲みたがるから」
「あのですね。ここはセリム殿の宮殿でしょうか」
「特に月の明るい夜には女をちゃんと見張ろう」
ちらりと彼を見たがそれでも歌い続ける。
「若い貴公子殿がやって来て馬鹿な女に手を出して」
随分とシニカルな歌詞になっていた。
「言い寄ってそれで女の操もおさらばさ」
「歌は終わりま
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