第一幕その一
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したか?」
区切りがついたと見てまた声をかける青年だった。
「あのですね。それで」
「ああ、わかってるぞ」
おっくうな動作で彼に顔を向けて言ってきた。
「聞こえてるぞ。そんなに五月蝿く言わなくてもな」
「ではですね。ここはセリム殿の宮殿でしょうか」
「そうだ」
一言答えてそのままその場を去ろうとする。
「それじゃあな」
「ちょっと待って下さい」
「俺は忙しいんだが」
ジロリと青年を見て言い返した。
「まだ何かあるのか?」
「貴方はここにおられるんですか?」
「そうだ」
ぶしつけな声は変わらない。
「それがどうかしたのか?」
「それではペドリロという男を御存知でしょうか」
「ペドリロ!?」
その名前を聞いて一気に顔を顰めさせる黒人だった。
「あいつか」
「御存知なんですね」
「あんな奴のことは知るか」
こう言ってまた去ろうとする。
「あんなお調子者のことなんか知るものか。会いたければ勝手に見つけろ」
「あの、そんな意地悪はなさらずに」
「あいつはキリスト教徒だぞ」
嫌悪感を丸出しにしての言葉だった。
「折角ムスリムになれば奴隷から解放されるというのに頑固に改宗しないしな。あんたもキリスト教徒みたいだがな」
「それが何か」
「ふん、やはりな」
彼に対しても嫌悪感を見せるのだった。
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