暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第三一幕 「俺が狼に人生相談を頼むわけがない」
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も思い出したくない、そして力を求める大きなきっかけとなった思い出だった。今でも思い出しては苦い顔をしてしまう事件。そしてその内容は、出来れば弾や蘭には知られたくない内容でもある。

「・・・奥の個室を使うといい。弾、蘭、家の方に戻ってろ」
「え?ど、どうして・・・」
「まぁまぁ、取り敢えず撤退しようぜ?大事な話みたいだし」
「ちょ、お兄!」

厳さんの有無を言わせない態度に戸惑う蘭だが、場の空気に何かを感じ取った弾によって連れて行かれる。こういう所で空気が読めるのは弾のいいところだ。後で話の内容を聞かれるかもしれないけれど、その時はその時か。

「じゃ、場所を移そうか。余り他人に聞かせる話ではないしね」



 = =



「・・・それで、クラースさんは何処まで知ってるんですか?」
「織斑本人から聞いた、と言えばいいかな?」
「全部じゃないですか・・・っていうか呼び捨てとか千冬姉とどういう関係ですか!むしろそこが気になります!!」
「・・・何だ、聞いてないのか?ドイツ時代の飲み仲間で同僚だよ」

後半の質問だけ声を張り上げる一夏にクラースは意外そうな顔で答える。彼としてはてっきりその辺りは千冬が一夏に話したことがあるものと思っていただけに、一夏の鬼気迫る顔は心底意外だった。・・・まぁ姉の方のブラコンっぷりはある程度知っていたので「ああ、こいつら間違いなく姉弟だ」と心のどこかで納得してしまっていた。
対する一夏は姉と近しい(と一夏は思い込んでいる。実際それなりには近いが)クラースに露骨に警戒しつつも、「ドイツ時代」の言葉の意味を理解し歯噛みした。


2年前の事だ。当時、世間は第二回モンドグロッソに沸き立っていた。それは一夏も同じこと。前回優勝者にして日本代表だった千冬の雄姿を見るために、凰家族やユウと一緒に開催国イタリアへと赴いた。
千冬の実力は全体的に操縦者のレベルが上がった第二回でも健在で、愛機の暮桜と共に破竹の勢いで快勝を続けた。そして大会も中頃を過ぎた時、事件は起きた。
一夏が、誘拐されたのである。
それからの千冬の行動は早かった。何の迷いもなくすぐさまモンドグロッソを辞退し、ドイツ軍の情報提供を基に一直線に一夏の元へ向かい、救出。幸い一夏に怪我はなく、事件は1日の内に終わった。当時の一夏にとっては突然眠らされ、知らない間に何所かに連れていかれ、気が付いたら姉に抱きかかえられていたという認識しかなかったため、事度重大さを理解しきれていなかった。
犯人の狙いやどの組織が行ったのかは一切不明。ただ噂によると実行犯の一部はドイツ軍の内部離反者であり、その元身内の不祥事を秘密裏に処理するためドイツが情報提供を行ったという説があったが、真偽のほどは定かではない。

問題だったのはそれからである。
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