暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第二八幕 「母の愛した愛し子よ」
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2人は暫くそんな他愛のない会話をし、やがて墓に背を向ける。残念ながら時間的に余り長居は出来ないのだ。本当はきっちり墓掃除もしたいところをぐっと堪え、ふたりは最後に墓の方を振り向く。

「行ってきます。今度は父さんと一緒に来るからね?」
「ついでに友達とましなお供え物持ってくるから、楽しみにしててくれよ?」

2人の少年は今度こそ墓に背を向け歩き出す。それを見守る様に、既にすべての花が落ちてしまった桃の木の枝が静かに揺れた。







外出許可を取るのは何も男子生徒達だけではない。女子生徒とて親元や故郷を離れて学校へ通っているのだから、当然その中からも実家を恋しく思うものは出てくる。特に新しい環境に来てばかりの1年生はその反応が顕著であり、中にはホームシックにかかってしまう生徒だっている。
よって学園は月に一日、土曜日の授業を中止して2日の休みを作り、その時だけ短期外出申請を出していたものに許可を出すという仕組みがある。国民の祝日が被る場合はその限りではないが、生憎6月は国民の祝日など存在しないため2連休が設けられている。
現在、1年生の中では50人近い生徒が帰省しており、佐藤稔もその中の一人であった。


「はぁぁ〜〜〜・・・やっぱりこのソファに寝そべってダラダラするのが至福の一時(ひととき)だわ〜〜」

横のテーブルに置いてあるお菓子を貪りながら脱力し切った体を横に向ける。
実家というものは不思議なもので、久しぶりに訪れてみると自分でもびっくりするほど恋しく感じてしまう。学園でもダラダラすることはあるが、久々の我が家で得られるリラックス度とは全く違うように感じる。これが帰る場所がある安心というやつなのかもしれない。


そこまで考えて、不意に少しだけ表情を歪める。

佐藤稔は転生者だ。確かに親との血の繋がりはあるし、今まで重ねてきた生活に嘘はない。
だがどうしても、“最初の人生の両親”の事を思うと今世の両親を素直に親と思えない部分があるのは、感覚的にどうしても拭えない。それに、理由がどうかは知らないが、今自分が此処にあることによって“本当は生まれてくるはずだった佐藤稔”を消滅させてしまったかもしれないという思いは今でも消えることはない。
証明も説明も出来ない、あるかどうかも分からない罪の意識が胸の奥を圧迫しているような苦しさ。IS学園に受かった日も、そのことを少しだけ思い出してナーバスになってしまった。

(とんだ恩知らずだなぁ、私・・・「私は貴方達の子供ではありません」って、ほんの少しでも思っているんだもん・・・自己嫌悪だなぁ)

両親が望み、母が自分のお腹を痛めてまで生み出し、父が名前をつけたというのに、私は心のどこかで“本当の家族じゃない”と思っているのだ。あれほど愛を注いで
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