暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第二八幕 「母の愛した愛し子よ」
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、家に帰るとすぐにその実感が押し寄せてくる。
母のいない家。母のいない食卓。母のいない寝室。母が買い物に行くときに何時も持っていたバッグ。朝起きるといつも母が振るっていたフライパン。夜に眠れないとき、いつも母が呼んでくれた絵本。
母がいつもいる場所、母がいつも持っていた物は沢山あるのに、そこに母の姿は無い。
まるで別世界だった。自分の生きている世界から綺麗に切り取られたようにいなくなった母の存在をようやく認識したユウは、ただひたすらに泣いた。泣き疲れて眠り、翌日に起きた時に母がいないことを思い出し、また泣いた。
思えばその頃から兄のお節介が急激に増えて行ったような気がする。居なくなった母の代わりを務める気だったのだろう。結果として僕が兄に依存する時間は増えたから、その狙いは的中したと言えなくもない。
まぁその反動で反抗期には少しばかりグレてしまったが、それも今となってはいい思い出である。
「・・・さて、ユウ。あれはちゃんと持ってるか?」
「忘れるわけないよ。造花で悪いけど・・・はい、これ供えていくね?」
墓の花立てに溜まった雨水を捨て、その中に鮮やかなピンクの桃の造花を差し込む。
桃の花、それは母の最も好きな花であり、ユウの覚えている数少ない母の好きなものだ。
もうだいぶ記憶がおぼろげになってしまったが、母方の実家であるこの家に来るたびに庭に生えた桃の木を眺めていたのを覚えていた。
「なあ、ユウ」
不意に、後ろからジョウの声が掛かった。振り返りざまに問う。
「何?」
「何で母さんが桃の花が好きだったか、話したっけ?」
「・・・聞いてないよ。どうしてなの?」
しんみりした表情だったジョウは、表情を一転させニカッと笑いながら高々と空を指さす。
「『桃の花言葉は“天下無敵”!ついでに“愛嬌”!可愛くて無敵なんて、素敵でしょ?』・・・だってよ」
「・・・ふふっ、母さんってば意外とお茶目だったんだね」
「だろ?俺の性格も多分母さんに似たんじゃないかと疑ってるんだぜ?」
ははは、と互いに笑いあう。恐らく自分の前では見せなかったのだろう、母の意外な一面。
もう会えないけれど、それでも無くしたピースが一つ見つかったような気がして素直に嬉しかった。
それにしても“天下無敵”か。以外にアグレッシブな人だったんだろうか。
「もし母さんが生きてたら、嬉々としてISに乗ろうとしたんじゃないかな?」
「あり得るな・・・結構アクティブな人だったし、何せ息子がこれだからな!」
「・・・天下無敵かぁ」
「目指してみるか?」
「それにはまず兄さんに勝たないとね?」
「違いないな!まぁ、まだまだ若い衆に負ける気はないけどな!」
「なにその自分が年寄りみたいな言い方・・・2歳しか違わないくせに」
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