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無明のささやき
第二十章
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故なのか、それとも仕組まれたのか確かめようと飯島に視線を向けた。飯島がぼそっと言った。
「ざま見ろ。」
竹内は手首を握り締め、跪くと「うぎゃー、うぎゃー」と悲鳴とも怒声ともとれる声を張り上げた。飯島は竹内の顔を思いきり殴った。竹内は仰向けに倒れた。飯島は床に落ちたもう一丁の拳銃を拾い上げ、起き上がろうともがく竹内に話しかけた。
「俺は向田がお前の仲間だと確信していた。だから銃身の真中に鉛を詰めておいたんだ。ざまあ見ろ、この野郎。」
そう言うと、竹内の腹部を思いきり殴った。竹内はうーんとうめいて転げたが、血だらけの顔に憎悪を漲らせ、唸った。
「この疫病神が。」
飯島はが突然狂ったように叫んだ。
「ふざけるな、貴様こそ厄病神じゃあねえか。この蛆虫野郎が。」
そしてもう一度腹を蹴った。竹内はどさっと大の字に倒れた。
 後で章子の声がした。飯島は駆け寄ると跪いて上半身を抱き上げた。右胸が真っ赤に染まっている。章子が口を開いた。
「やっぱり天罰が下ったわ。そんな気もしないではなかったの。ずっと迷いっぱなし。悪魔になったり普通の人間に戻ったり。結局悪人になりきれなかった・・・あの日、貴方に恥をかかされて、私、正気を失ったの。それがこんな結果を生むなんて。」
「ごめんよ、あの時、何故あんな風に怒鳴ってしまったのか。嘘つき呼ばわりまでしてしまった。」
章子は泣きそうな声で言った。
「嘘をつく気など無かったわ。時期的にみてぴったりだったから、あなたの子供だと信じた。神様が今頃になって、昔の願いを叶えてくれた。そう思ったの。」
「本当にご免。あの時、俺はどうかしていたんだ。本当にご免。」
「謝らないで。かえって辛いわ、私のしたことを思うと。まさかあんなことになるなんて信じられなかった。和子さんが殺された時、本当に恐ろしかった。その原因を作ったのは私だもの。自殺しようかとさえ思った。佐久間の狂気の炎に油を注いだのは私だったの。」
飯島は涙声で叫んだ。
「そんなことはない、決して君のせいじゃない。」
「いいえ、私のせいよ。うまくやれば、佐久間の3億の保険金が手に入るかも知れないって、何かいい知恵はないかって竹内が言ったの。それを聞いた時、私も狂ってしまった。本当にお金が欲しかったから。」
こう言って、ごほっと咳き込み、血を吐いた。飯島は章子の唇についた血を指先で拭った。
「もう、喋るな、今、救急車を呼ぶ。」
章子が続けた。
「いいえ、もうすぐ死ぬわ。だから最後まで話をさせて。竹内が言った通り、DNA鑑定のアイディアを出したのは私だった。あの時、一瞬、魔が差したのね。そのアイディアに竹内は飛びついた。もう後には引けなかった。あんなことさえ言わなければ・・・すべて後の祭り。」
最後の言葉を遮るように、叫んだ。
「違う、それは違うんだ。俺は
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