第二十章
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に荷担させ、和子の運命を狂わせることになったんだ。」
こう言うと笑い転げた。その笑い声を聞いて、飯島が顔を強張らせた。竹内はひとしきり笑うと、飯島に向き直り叫んだ。
「いいか、飯島、DNA鑑定の偽造のアイディアは章子が思いついたんだ。それで佐久間は本格的に狂っちまった。和子を殺すと言い出したんだ。俺だって、まさか和子さんを殺すなんて思ってもみなかったよ。だが賽は投げられたんだ。」
飯島は、打ちのめされた。章子を憎んだ。章子が和子を殺した。一瞬、そう思ったのだ。飯島が章子に向って怒鳴った。
「なんてことをしたんだ、貴様。貴様が和子を殺したんだ。」
章子がくるりと後を向いてしゃがみ込んだ。章子の肩がぶるぶると震えている。泣いているのだ。
「・・・・・」
章子がしゃくりあげた。竹内が怒鳴った。
「おい、章子、こっちを見ろ。章子、こっちを見るんだ。お前の元恋人を、今から殺す。それをその目に焼き付けろ。お前が俺を愛しているなら、いや、もし、俺と一緒に生きて行くというなら、俺の命令に従え。」
泣きながら章子が叫んだ。
「出来ない、出来ないわ。お願い、許して、許して。」
「おい、こっちを向け、向けって言っているのが分からんのか。」
竹内が興奮して叫んだ。飯島は竹内の異常な表情に危惧を覚えた。今までの勝ち誇った表情は消えうせ狂気が漲っている。
銃声が1発轟いた。章子が前につんのめった。飯島はがっくっと膝を折り、床に手をついた。そして頭を床に叩きつけた。何度も何度も。そんな飯島の様子に、竹内は虚ろな視線を向けたまま言った。
「結局、章子は俺の伴侶にはなれなかった。もっとも、金持ちになれば、女なんてどうにでもなる。」
虚脱したように飯島を見詰めている。ふと我に返ると、右手の銃に視線を落とした。そして、再び飯島を見た。その右手がぴくりと動いた時、飯島が言った。
「その拳銃で、俺が佐久間と章子を殺したというわけだ。」
竹内は、飯島の言葉でようやく手順を思い出したようだ。すかさず飯島が叫んだ。
「もうたくさんだ。早く、俺を殺せ。俺も和子や章子の世界に送ってくれ。もうこんな現実はたくさんだ。さあ、殺せ。」
竹内は頷きながら、銃を左手に持ち替え、飯島から奪った拳銃を尻のポケットから取り出した。
「飯島、言われるまでもない。殺してやるよ。この銃を佐久間に握らせておけばすべてシナリオ通りになる。向田からこの銃のことは聞いていた。さあ、目をつぶれ。お前に見詰められては、俺も撃ちずらい。」
飯島は目を閉じた。
銃声が響いた。飯島はゆっくりと目を開けた。竹内はあんぐりと口を開けて信じ難い光景を見詰めていた。右手の指が3本飛び、残った薬指と小指の骨が剥き出しになっている。心臓の鼓動に合わせて、ぴゅーぴゅーと血が吹き上げていた。
竹内は、これが突発的な事
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