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無明のささやき
第十九章
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っただろう。あれは空砲だ。あれで嚇しておいて、その後、安心しきったお前をホテルで襲う手はずだった。まさか南が事故を起こし、お前が代々木にぶっ飛んで行くとは思いもしなかった。しかし、何しに行ったんだ。」
「別に。ひさびさに会長のご尊顔を拝みたくなっただけだ。」
これを聞いて、またしても笑い転げた。そうしている間も竹内は相変わらず銃口を飯島の胸に向けている。何か良い方策はないものかと辺りを窺がった。
眩しいライトの光を遮るように手をかざして視線を落とすと、暗闇の中に、濃い黒い線が見えた。サーチライトの電源コードが、飯島の足元を這っているのだ。幸いサーチライトの光は飯島の上半身に向けられていて足元まで届いていない。左足でコードを押さえ、右足のつま先で持ち上げ、それを踝に巻きつけた。
飯島はいちかばちか、賭けに出ることにした。飯島はぎょっとして竹内の右後方に視線を向けて叫んだ。
「箕輪、やめろ、奴は銃を持っている。」
竹内は一瞬驚いて後を振り向いた。飯島はコードを右の踝に巻き付けたまま、佐久間が銃を放り投げたあたりに向かって飛んだ。
 竹内は振り返り、すぐさま引きがねを引いたが、銃弾は飯島の腰のあたりをかすめ床に当って弾けた。竹内が、ごろごろと転がる飯島を視線で追いながら、銃を構え直した時である。突然、サーチライトが竹内に向かって倒れてきた。
 咄嗟に体を引いてそれを避けた。ガチャンとガラスが弾ける音がして、サーチライトの光は消えた。暗闇が倉庫全体を覆った。竹内は銃を撃とうと身構えたが、強烈な光で目をやられ、しばらく動けなかった。
 飯島は体を回転させ壁際に逃れた。幸い、佐久間の拳銃は体を回転させている途中で背中に当った。運が良かったのだ。沈黙が暗闇を支配した。
 飯島は息を殺し、暗闇に目を慣らそうとするが、サーチライトの光りが瞼の裏にまだ残っている。瞼を閉じて残像が消えるのを待った。
最初に行動を起こしたのは竹内である。拳銃を闇雲に撃ちまくり、そのうちの一発がコンクリートの壁に弾けて飯島の耳を掠めた。しかし、カチッカチッという金属音が響き、銃弾は五発目で途絶えた。竹内の声が響く。
「ふ、ふ、ふ、銃火がちらりとお前の影を映し出した。」
 竹内は撃ち尽くした空のカートリッジを床に落とし、予備を装着した。銃を構えて最初に発砲した時だ。飯島はこの瞬間を待っていた。飯島は竹内の銃火の残像に向かって佐久間の銃を撃ち尽くした。カチ、カチという撃鉄の音が響く。
 竹内が倒れる音がした。飯島はゆっくりと近づいていった。暗闇に慣れた目に竹内の死体がぼんやりと浮かんだ。飯島は竹内の体を足で蹴った。ぴくりともしない。飯島は溜息をつき、へたり込んだ。ようやく全てが終わった。そう感じた。
 飯島はポケットから煙草を取り出し、火を点けた。深呼吸して煙を肺に送り込ん
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