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ヘンゼルとグレーテル
第一幕その七
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第一幕その七

「そんなこと言われたら」
「鬼火・・・・・・じゃないよな」
「だから止めてって」
「だから止めてって」
 グレーテルの声が木霊になって返って来ました。しかし怯えている彼女にはそうは聞こえません。化け物の声に聞こえたのです。
「化け物!?」
 顔が今度は真っ白になりました。
「違うって、木霊だよ」
 ヘンゼルは怯える妹を抱いて言いました。
「あれは木霊だって」
「そうなの」
「そうさ、落ち着けよ」
「うん」
 こくりと頷きます。顔色が白から青に戻りました。
「それなら。あれっ!?」
 ここで霧が出て来ました。白い、薄い霧です。
「この霧って」
「グレーテル、僕の後ろに隠れて」
「う、うん」
 グレーテルは咄嗟にお兄さんの後ろに隠れます。お兄さんは妹を護ろうとしています。
「本当に化け物が!?」
「安心して、子供達」
 けれどそこに出て来たのは化け物ではありませんでした。穏やかな顔をした黄金色の髪を持つ美しい女性でした。優しげ笑みを二人に向けています。
「私は化け物ではありませんよ」
「じゃあ幽霊!?」
「悪魔!?」
「幽霊でも悪魔でもありません」
「じゃあ何なの!?」
「あなたは。誰なの!?」
「私は妖精です」
 二人に言います。
「眠りの精。子供達を安らかな眠りにつけるのが私の仕事なのです」
「それが仕事」
「はい」
 眠りの精は優しい、澄んだ声で答えます。
「小さい子供達の為に私はいるのです」
「私達の為に」
「だから。安心して」
 ゆっくりと手を掲げます。
「この霧はあなたたちの為に」
「私達の為に」
「あるのですから。怖がることはないのですよ」
「それじゃあ」
「はい」
 こくりと頷きます。
「この霧の中で安らかに眠りなさい。そうすればあなた達は夢の世界に」
「けれど」
 それでもまだグレーテルは怯えていました。優しい精霊を見てもまだ震えは残っていました。
「寝ている時に何かが来たら」
「狼なんか来たら僕達食べられちゃうよ」
 ヘンゼルもそれは心配していました。だから言うのです。
「空にはお星様があります」
 眠りの精は心配するそんな二人に対して言いました。
「そこにいる天使達があなた達を護ってくれるのです」
「そうなんですか!?」
「天使様達が」
「そうです」
 眠りの精はまた頷きました。
「楽しい夢を届けながら。だから」
「このまま寝ていいのね」
「そうです。このまま」
 眠りの精は本当に優しい声で二人に言うのです。今度はその天使達について言いました。
「二人はあなた達の頭に、二人は足、二人は右、そしてまた二人は左」
 天使達は大勢いるようです。
「二人は上で、二人は側で。そして最後の二人は夢の世界
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