第百三十二話 越前攻めその三
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「人をやってそれで城や砦を引き渡すか降るならそれでよい」
「そして若し降らねば」
その時はと、生駒はこのことも言った。
「その時こそ」
「攻めればよいな」
「その時は仕方ないです、ですが」
「鉄砲じゃな」
「それを使って攻めましょう」
そうしようというのだ。
「その時は」
「大抵の城や砦は降るであろうな」
柴田は己の顎の濃い髭をしごきながら述べた。
「それか逃げるか」
「そうせぬのは金ヶ崎城位でしょう」
「あの城か」
「あの城は越前の要衝にありしかも堅固です」
「かつて新田義貞公が立て篭もり戦った城であったな」
「はい、南朝の多くの者が見事な最期を遂げた城です」
まさにその城だというのだ。
「場所もかなり厄介なところにあります」
「そうじゃな」
「ですがあの城を手に入れれば一乗谷まですぐです」
朝倉義景の居城であるその城とだというのだ。
「一直線に進めます」
「あの城さえ陥とせば越前での戦は勝った様なもの」
「だからこそです」
「あの城は何としても陥とさねばな」
「派手な戦になります、ですから」
それ故にだとだ、生駒は柴田に話す。
「あの城は腹を括って攻めましょう」
「そうするか、ではじゃ」
「はい、それではですな」
「金ヶ崎を攻める時は」
蒲生と長可が柴田の言葉に応える。
「我等もその武辺をお見せします」
「是非共」
「頼むぞ、それではな」
柴田は二人の言葉を受けて楽しげに笑った、そのうえでだった。
「わしも果報者じゃ、この二人の武辺を見られるのじゃからな」
「権六殿の武辺は」
「無論それも見せる」
生駒にもその笑顔を見せる。
「楽しみにしておるのじゃ」
「さすれば」
「腕が鳴るわ」
己も戦うつもりだった、しかも存分に。
「金ヶ崎、どうして攻めようか」
「鉄砲を使いますな」
「それじゃな、鉄砲も面白い」
柴田は鉄砲についても言う。
「それも使い」
「攻めましょうぞ、鉄砲も使い」
「かつての観音寺城を攻めた時と同じ様にやるか」
「我等の鉄砲の数はあの時よりも多いです」
増えたのは兵の数だけではないのだ。
「鉄砲もまた数があれば余計に違います」
「そうじゃな」
「我等先陣も五百あります」
織田家がまだ尾張にいた頃と同じだけの数を持っているというのだ。
「その五百で」
「派手にやるか」
「とにかく鉄砲の音は派手に鳴らしましょうぞ」
生駒は鉄砲の威力よりも音のことを言う。
「そうましょうぞ」
「音か」
「はい、音です」
「それも効くな」
「そうです、鉄砲の音は大きいですから」
「あれにはわしも最初は驚いたわ」
豪胆なことでは比類なき柴田でもだというのだ。
「朝倉には鉄砲は然程ないな」
「殆どない
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