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戦国異伝
第百三十二話 越前攻めその二

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 それで織田家の十万の兵もだった。
「どうとでもなるわ、大叔父上さえおられればな」
「左様でありますか」
「それだけいても」
「案ずることはない」
 まだ言う。
「何を恐れるか」
「しかし殿が出られぬのは」
「くどいのう、わしが出る必要もないではないか」
 面白くなさそうな顔での言葉だった。
「そうではないか」
「では」
「そうじゃ、わしはここにおる」
 この一乗谷城にだというのだ。
「このままな」
「そうですか、では」
「何とでもなるわ」
 やはりこう言うのだった。
「では話はこれで終わりじゃ、わしは奥に下がる」
「殿、それでは」
「まだ話したければ御主達でするがいい」
 義景は最後の言葉はぞんざいにしてそのうえで下がった、そのうえで城の中の己の居に入りまずは楽を奏でさせる。
 そのうえで能を舞わせ周りに女達を侍らせ酒を飲みつつ言うのだった。
「これがよいのじゃ」
「都ですな」
「都の楽しみですな」
「そうじゃ、これがよいのじゃ」
 酒を飲みながら茶坊主達にも述べる。
「まさにな。後はじゃ」
「後はとは」
「花も見るぞ」
 それもだというのだ。
「風流にな」
「ではそこに移られ」
「そのうえで」
「楽しもうぞ」
 義景は迫る織田家の軍勢のことなぞどうでもよく今は酒と能を楽しむばかりだった。花を見楽を楽しみ女達と戯れる、そうした中にいた。
 しかし織田家の大軍は順調に越前に向かっていた、既に先陣を務める柴田は越前との境にまで来ていた。
 今まさに境を越える時だった、柴田は傍らにいる蒲生と森長可に言った。
「さて、それではじゃ」
「はい、今からですな」
「いよいよ越前ですな」
「どうも宗滴殿はおられる様じゃがな」
 彼が身体の調子を崩していることは既に織田家にも伝わっている。
「しかしそれでもじゃ」
「油断することなく」
「攻めていきますか」
 蒲生と長可が柴田にそれぞれ言う。
「では今より越前に入り」
「そのうえで」
「支城だの砦に兵を送るよりも」
 ここで千陣の軍師を務める生駒が言って来た。
「よりよいことが有り申す」
「砦等に人を送ってか」
「はい、降ることを促していきましょう」
 それがよいというのだ。
「城や砦を出れば命は取らぬと」
「そう言っていけばか」
「よいかと思いますが」
「そうじゃな、わしは攻めるのは好きじゃが無闇に攻めるつもりはない」
 織田家きっての武の持ち主だが下手に攻めて兵を失う様な軽率な真似はしない、柴田も伊達に織田家でも屈指の者ではないのだ。
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