第一幕その三
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、これから」
お母さんはその壊れてしまった壺を見て途方に暮れています。
「ミルクがないと今晩は何もないのよ」
「何も!?」
「そうよ。折角お粥を作ろうと思ったのに。それがないと」
「あのお母さん」
ヘンゼルが恐る恐る声をかけます。グレーテルがその側に寄っています。
「だったら僕達」
「何を食べたら」
「あんた達の食べ物なんか何処にもないわよ!」
「えっ!?」
「嘘っ!?」
「嘘じゃないわよ!もう家には何もないの!」
かなりヒステリーになっています。無理もありません。
「じゃあ僕達このまま餓え死に!?」
「そんなの嫌よ!」
「嫌だっていうのなら森にお行き!」
お母さんはあまり何も考えずに、怒りに任せて言いました。森に何がいるのかよく知らなかったのである。
「それで野苺でも採って来るんだね!それが夕食だよ!」
「う、うん!」
「わかったわお母さん!」
二人は慌てて壁にかけてある籠を手に取って頷きました。
「その籠を一杯にしてくるまで家に入れないからね!わかったわね!」
「はあ〜〜〜〜〜い!」
「それじゃあ行って来ます!」
二人は逃げるように家を飛び出します。こうして家にはお母さんだけになりました。
お母さんは壁にかけてあるモップでミルクを拭き壺の欠片を箒で掃除します。それが終わって疲れ果てた顔でテーブルにへたれ込みました。
「もうこれで本当に何もないのね」
言ったところでどうにかなるわけではありませんが言わずにいられませんでした。
「ミルクも。パンもあと少し」
だからお粥にしようとしたのです。お粥は量を誤魔化すのにもいいのですから。
「何もないなんて。これからどうなるのよ」
お母さんはさらに暗い気持ちになっていきます。
「これからはお水だけなのかしら。そんなのじゃ」
「やったぞ、やったぞ母さん!」
「!?」
そこで家の外から大人の男の人の声が聞こえてきました。
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