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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜妖精郷と魔法の歌劇〜
一抹の激突
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ピードで広がったのだ。墨汁を垂らしたように、綺麗な真円。

リーファ達地上のプレイヤー達から見れば、レン達を中心に空の一角に真っ黒なお盆が出現したようなシュールな光景だ。

「なん……だ。これは…………?」

呆然と呟くユージーンに、レンの答えはなかった。

ただ、無言でふぅっと呼気を吐く。汗の玉が額を伝っているのが、近距離なのでよく見える。

それを見ながら、サラマンダーはやはり、と思った。先程から自身の体から纏わりついて離れない倦怠感。初めは気のせいと思っていたが、どうやら違うらしい。この力の正体はいまだに判らないが、一つだけ解かった。

この訳の解からない力は、途轍もない集中力を要するという事だ。

集中力というものは、当然ながら無限ではなく有限だ。回転速度を上げたエンジンは、通常よりもガソリンの使用量は多い。そして、そのガソリンは簡単に給油できないのだ。これほど厄介なことはない。

ユージーンの思考は、唐突に塞き止められた。

漆黒のサークルの、滑らかな表面から音もなく幾多の()が現れた。それは、ずずずとサラマンダーの身体に纏わりついて下に引っ張る。

すなわち、サークルの中に引き込もうとするのだ。

「ぐ……ぬぅ…………ッ!」

翅を目一杯震わせるが、捕らえられた身体はピクリとも動かない。動いてくれない。

次第に絶望感が頭の中に寒々と広がってくる。

じりじり、と非常に緩慢な動作で、ユージーンは闇の中へと引きずり込まれていく。

とうとう、足の先がどぷん!と粘着質な音とともに円の中に触れる。同時に感じるのは、冷気。

ひやりと言うような生易しいものではない。身体を芯から凍らせるような、そんな寒さ。

恐怖が口の中から漏れ出て、ヒッ!という小さな音となって発声させられる。

身体はもはや胸部分まで浸かっており、もうどう足掻いても抜け出せない。

引き込もうとしていた無数の手は、もはや引き込むではなく、押し込もうとするようにサラマンダーの頭を力任せにぐいぐいと押す。

首、そして顎。

どんどん水面は上がってくる。そして────

「た、助け────────ッ!!!」

全てが、闇に沈んだ。

薄れゆく意識の中、《猛将》ユージーンは壊れたラジオのような、《終焉存在》と呼ばれる少年の声を聞いた。その声は確かに、こう言っていた。


───魔女狩(ソルシエール)峻厳(ゲブラー)》────
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