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王道を走れば:幻想にて
幕間+慧卓:童貞 その1 ※エロ注意
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倒くさい』とか『美味しくない』とか、そんな理由で御肉料理作ってないと思ってたんだけど、案外そうでもないんだ?」
「えっ?い、いや、まぁ結構作ってるぞー?」
「目が泳いでるわよ!やっぱり作ってないんだ・・・。本当にあなたって自分の事に無頓着なんだから。そんなんだから、バイトの時も御客さんに心配されたりするんでしょ!『あの子痩せ過ぎない?』ってね」

 うっと言葉に詰まる慧卓。其の通りだ。つい最近のバイトで、色気ムンムンの人妻風の女性から華奢な体躯を心配された事があったのだ。バイト仲間である実晴にとっては、それは慧卓以上の重い言葉となって届いたのであろう。
 何も言い返せないでいると、妙に性急となった口振りで実晴が言う。

「だから!今日は御肉料理をいっぱい食べてもらいます!見るに見かねて作ってあげるんだから、感謝の一つくらいしなさいよっ」
「・・・あぁ、そういう事か。いつもありがとな、実晴」
「・・・お、おう」

 彼女の気持ちが胸にじんわりと沁み込み、慧卓は心の底より感謝を込めて礼を述べた。その顔付きは知らぬうちに、自らの立ち位置を十二分に理解して己を見詰め直した、男の表情を浮かべていた。実晴は僅かに呆然とした表情でそれを見詰め、慌てて料理の支度を終え始める。 

(・・・今の、反則でしょ・・・馬鹿)

 不意にも、胸中の淡い心を射止められた実晴は、潤いを帯びた瞳でちらちらと慧卓の横顔を窺っていた。 
 そして夕餉。食卓に並ぶのは見目豪快なヒレカツ、わかめとじゃが芋の味噌汁、そして箸休めの酢蛸に白米だ。

『いただきます』

 慧卓はヒレカツに箸を伸ばした。始めの一切れは何もつけずにそのまま食す。さくりと、歯切れの良い音が咥内に共鳴し、歯の隙間から舌の上までを肉汁と、厚みのある食感が伝っていく。高温の油に浸かった肉の旨みがさっくりとした衣の中に閉じ込められ、咀嚼する度にそれが溢れかえっているのだ。

「・・・どう、美味しいかな?」
「・・・あぁ、掛値無しに絶品だ。凄いよ、実晴」
「本当っ!?」

 実晴は喜んで己も食す。途端に、華やかな笑みが顔に広がった。

「んー!今日も成功したなー!特価商品を買い過ぎちゃったけど、やっぱり正解だったなー!」
「・・・待ておい。買い過ぎたって如何いう事だ?」
「あっ」

 聞き逃せぬ単語を聞いて問いかけた瞬間、顔に汗を掻いて固まる実晴。しどろもどろになりながら彼女は答えを返す。

「え、えっとねぇ。実は近くのスーパーで御肉の特価セールがやってたから、ここぞとばかりに買い過ぎちゃって・・・一人だけじゃ消費しきれないなーって思いまして」
「・・・で、御肉の賞味期限が迫っている事に気付いて焦り、俺と?」
「もっ、勿論御肉料理を食べさせたかったのが一番の理由だ
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