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王道を走れば:幻想にて
幕間+アリッサ:酔いどれの悪夢 その2
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鋭い牙のような光にも見えて、元山賊は一瞬たじろぐ。アリッサは身体の筋肉を強張らせると、一瞬で爆発するかのように前へ駆け出した。

「おぉぉおおっ!!」
「うあっ、くっさっ!?」

 臭気にやられながら一人の男が拳を繰り出す。アリッサはそれを巧みに避けてあっさりと接近する。
 そこからが彼女の独壇場であった。男らが今まで見た事もないような動きで、拳や蹴りなどを繰り出して翻弄してきたのだ。ある時は千鳥足となりながら怪鳥のように爪を立てて襲ってきて、またある時は尻を突きだして腹部を打ってくる。グリーブ越しのためやけに痛い。男らが今まで相対した事の無い、有り得ぬほどに予測の付かぬ動きだが、しかし一手一手が恐ろしい程に完成されており、美しく炸裂する。時折自分が泥酔状態である事を知らせるように喉をひくつかせ、泥のような息を漏らす。しかし眼光の鋭さはまさに武の神髄を極めた武士の如きものであった。知る人驚嘆の内に彼女が扱う武術をこう呼ぶであろう。『酔拳』と。
 虎の如き猛烈な拳が男のそれと正面からぶつかり合い、男は圧倒されて後退する。片方の男はまるで大壺を回すかのように頭を腕で揺さぶられ目を回し、アリッサは横に回転しながら頭突きを繰り出し、男を床に叩き伏せた。アリッサはゴキブリのように這いながら男の上に覆い被さる。頭上に艶治な笑みを浮かべる美女が現れ、男の闘志がぐらりとする。しかし美女は口にうっぷと息を膨らませ、切羽詰まったように脂汗を掻いた。

「や、やめろ!ゲロをかけーーー」
「うぉろろろ・・・!」
「いやああああっ!!!」
「止めろぉぉっ、兄者を穢すなああっ!!」

 拳から血を流す男が女を羽交い絞めにして引き離す。倒れていた男はきらきらとしたものを顔面に受けて、衝撃の余り意識を失っているようだ。暴れるアリッサの肘が男の頬を小突くも、羽交い絞めは全く崩れなかった。
 それならばと、アリッサは酩酊状態が為し得る事か、自分の股座へと腕をやり、その下に手を潜らせて男の恥部を鷲掴みにする。

「はぅ!?」

 男は諸に意識をそこに向けてしまい、そして続けざまに股座より走った激烈な衝撃に、目を白黒させた。アリッサの手が男のそれを全力で、握り潰したのだ。

「ほぉ・・・ほぉぉぉっ・・・」

 声にもならぬ痛みを抱えて男は悶絶し、涙と共に、恥部を抑えながら床に倒れた。アリッサはゆらりゆらりとしながら、部屋の扉に背を預ける司会の男へと近づく。男はあからさまな恐怖を現していた。

「ひぃっ・・・く、来るな・・・来るなぁっ!」
「うえっ・・・どこだああ・・・バッジぃぃ・・・・」

 幽鬼の如き暗澹とした顔つきが迫り、男はぎゅっと目を閉じた。荒々しい手が男を掴むと部屋の隅へと投げ飛ばす。これより始まる暴虐の嵐に男は戦々恐々としていたが
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