第九章 双月の舞踏会
第三話 一時の別れ
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アこそ良かったんですか」
「何が?」
「ついて行くことも出来た筈です。シロウやロングビルはあなたを守り切ることが出来る。外の世界に行くチャンスだったのでは」
「そんなこと出来ないわよ」
「何故ですか?」
不意に風が強く吹き、抑えていた髪が手から離れ、セイバーの視界を塞ぐ。
ティファニアは自分の金色の髪が混じる視界をすっと細めた目で、視界の塞がれたセイバーにチラリと見ると口の中で小さく呟いた。
「……何でだろ……ね」
何処か寂しげな顔で呟いた声は誰にも聞かれることなく、風に紛れて消えていった。
風が止み、視界を塞いでいた髪が取り除かれると、まず最初にセイバーの目に映ったのは悪戯っぽい表情を浮かべたティファニアの姿であった。セイバーと目が合うと、ティファニアは「ふふっ」と小さく鼻で笑う。
セイバーが警戒するように眉を寄せると、ティファニアはくるりと背中を向け肩ごしに振り返り。
「アルト一人だと、あっと言う間にみんな飢え死にしてしまうからよ」
「っ! 待ちなさいティファニア! それはどういうことですっ! 」
激昂するセイバーから逃げるように、ティファニアは駆け出していく。笑いながら走り去って行くティファニアの姿に、セイバーは一瞬呆然とするが、直ぐにハッと気を取り直すと、小さくなる背中に向け駆け出した。
「ティファニアっ! 待ちなさいっ! どういうことか説明しなさいっ!」
士郎たちが去り、何時もよりも何処か静かになったように感じるウエストウッド村の中に、それを紛らわすかのようにセイバーの声とティファニアの笑い声が響きわたった。
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