第四十八話 会食その三
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「その時はよくとも後に批判される材料にもなります」
「そうなるんですね」
「醜悪な時代に行われた醜悪な行動も然りです」
アメリカも例外ではなく、というのだ。
「そのウォーレンもです」
「批判されたんですね」
「当然です。発言や行動、政策は残っていますから」
批判していた者達が当時どういった発言や行動をしていたかはわからないが実際にウォーレンはその人種主義を批判されることになったのは確かだ。
「ですから」
「当たり前ですね。そんな人が批判されるのは」
「そう、ウォーレンは紛れもなく人種差別主義者でした」
大石は彼をその批判されるべき考えの持ち主だった、と断定した。
「そう、だったのです」
「だったとは?」
「この彼がキング牧師の公民権運動に関わっていたのです」
「じゃああれですよね」
上城はウォーレンの過去の話からすぐにこう考えた。
「黒人の人達も攻撃したんですね」
「いえ、違います」
「違うんですか?」
「はい、彼はその時最高裁判所の長官でした」
元々法曹界の人物でありその見識や人格を大統領であるアイゼンハワーに買われ就任したのである。つまり人種差別主義者『だった』人物も法曹界には存在できるのだ。
「そこで彼は人種により分離することは違憲と判決を下しました」
「違憲とということは」
「キング牧師達の主張を全面的に肯定したのです」
そうしたというのだ。
「そうしたのです」
「えっ、人種差別主義者だったんですよね」
上城はコーヒーを飲む手を止めて大石に問い返した。
顔も驚いたものになっている、その顔での問いだった。
「そうだったんですよね」
「はい、そうでした」
「それでどうしてキング牧師に賛成したんですか?」
上城もキング牧師のことは知っている。アメリカの黒人への人種差別解消に大きな貢献を果たした偉人である。
そのキング牧師を助けた、それはつまりだというのだ。
「人種差別主義者だったのに」
「『だった』、ですから」
「『だった』!?」
「そうです。過去形ですね」
言葉が、だというのだ。
「この言葉は」
「はい、確かに」
「彼はその後で批判を受けました」
多くの者が戦争の狂乱の後で人種差別の醜悪さに気付いたのだ。冷静になって見たアメリカのその醜い一面にだ。
「人種差別主義者だと」
「それはさっきお話した通りですね」
「そうです。その批判から」
それによってだというのだ。
「彼も気付きその罪を自覚したのです」
「日系人を差別し収容所に送り込んだことについてですね」
「何しろ知事として公の場で言っていました」
つまり否定できない状況だったのだ。地位のある人物が公の場所で言ったこと、行ったことは否定できない。
「逃げられず集中的な批判を受
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