第23話 時には子供でも決めなきゃならない答えがある
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日から3日間の間、此処高町家で過ごす事である。
「お父さんは帰っちゃうの?」
「あぁ、クロノの見舞いもあるしな」
幸いクロノは重症を負いはしたものの、命に別状はなかった。それでも、未だに意識を取り戻さない彼を銀時は心配しているのだ。
元々言いだしっぺだった事に責任を感じているのかも知れないし、単に玉の輿を失いたくないと言う気持ちから来るのかも知れない。
その真相は銀時にしか分からないのであったが。
「とにかく、今日から3日間此処で生活して、それで答えを見つけてみろ。お前が、何処で暮らしたいか? 何処で生きて行きたいのか? それを見つけるんだ」
「私が見つけないと、駄目なの?」
「人生ってのはなぁ、時にゃガキの内でも決めなきゃならない答えってのがあるんだ。そして、お前にとって、それは今だ」
何時に無く真剣な声で銀時が言った。それを聞きながら、なのははココアを啜った。
甘い味が口いっぱいに広がったが、今はその味を楽しむ事が出来なかった。
「俺もこの家の奴等も、お前の答えには一切口出ししない。3日間の間此処で生活して、この世界を見て、どうするかは……お前が決めろ」
「うん……自信ないけど、やってみる」
「それで良い。それじゃ、3日後にまたな」
それだけ言い残し、銀時は席を立った。
足早になのはの元を離れ、家を出て行こうとする。
ふと、なのはの手が銀時の着物を掴もうと伸びた。小さく細い手が銀時の着物に近づく。
だが、その手が届く事はなかった。
銀時の着物に触れるよりも前に、銀時がなのはの元を離れてしまったのだ。
それから、銀時はなのはに見向きもせずに足早に部屋を出て、そのまま家を出て行ってしまった。
後に取り残されたのは、なのはと、高町家の面々だけであった。
「えっと……短い間ですけど、宜しくお願いします」
「こちらこそ、此処が自分の家だと思って存分にくつろいでくれて構わないよ」
大黒柱である士郎が優しくそう言った。正しく父の顔だった。
威厳のあり、また雄雄しくも優しい父の顔が其処にあったのだ。
なのはは、ふと自分の持っていたココアと先ほどまで銀時が呑んでいたココアを見比べていた。
なのはのカップには、まだ半分位残っていたのに、銀時のカップには一滴も残っていない。
全て飲み干してしまったのだ。
(私が、答えを見つけ出す……どちらの世界で生きるか……どちらの世界で過ごすか)
9歳の幼い少女には難しい選択であった。だが、決めなければならない。
重く圧し掛かる感情を振り払うかの様に。なのはは残っていたココアを一気に煽った。
不思議と、その時に呑んだココアは、何処かほろ苦く感じてしまった。
つづく
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