暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission9 アリアドネ
(9) シャウルーザ越溝橋 A
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ドガーを『鍵』だと勘違いしたままだ。俺を突破してルドガーを襲うかもしれない。だから、」

 これを他者にさせるのには大いに抵抗がある。だが、ルドガーが命の危険に晒されたあの時、ユティはカメラを捨てて戦った。ユティの実力が確かなのも海瀑幻魔との戦いで明白だ。

(この子はルドガーを死なせない。たとえ自分が命を落とすことになったとしても)

「お前に()()()()の一番大事なものを託す。()()()()()()ルドガーを守りなさい。できるな、ユースティア?」
「――――、ぁ」


 どこかで、何かの歯車が、ガキンと噛み合う音がした。


「とーさまが、そうして、ほしい、なら。ユースティアはルドガーを守る」
「いい子だ」

 子供騙しがよりによって自分の娘に覿面に効くなどどんな皮肉か。

「安心しろ。クロノスなんぞにやられやしない。ルドガーに悪い未来になると知った以上、死んでも死にきれないからな。すぐに帰るから、信じて待ってろ。アルフレドが一緒なら寂しくないだろう?」
「うん……さびしくない」

 ユリウスは前へ向き直り、走り出した。
 走りながらハーフ骸殻に変身し、壊れた壁を伝い、天井から大きくジャンプした。骸殻で強化した跳躍で、遙か空中のクロノスまで肉薄する。

「血迷ったか、探索者!」

 クロノスがターゲットを修正するコンマ以下の空白。ユリウスは骸殻を解き、銀時計を突き出した。さすがのクロノスもこれには瞠目している。ざまあみろ。

(お前なんかに壊させない)

 とにかく正史世界から遠い座標をイメージする。最悪、クロノス域外へ出て、時空の狭間をさまよっても構わない覚悟で。

 そこからはスローモーションだった。血に流れるクルスニクの力をありったけ開放する。
 「鍵」でないクルスニクの者でも使える力、次元を超えて別の世界へ行く力。

 正史世界から跳び出す寸前、地上を顧みた。
 かつての弟分も未来の娘も無事だった。
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