第10話 目覚めたのは天上天下唯我独尊的美少女ですよ?
[8/8]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
黒髪で紅と黒のオッドアイの女の子の格好をしているけど、あたしが知って居るあいつは、同じ紅と黒……紅と蒼だった事も有るかな。どちらにしてもオッドアイの男よ」
月下に存在するその場所は、美しいと表現すべきだろう。
先ずはその色彩が心を和ませる。
そして、香りが心を穏やかにさせた。
先ほど、リューヴェルトを包み込もうとした白木蓮の花が、気品のある白を月の蒼い明かりの元に姿を晒す。その姿は、満開の桜が感じさせる妖しいまでの美しさとは違う、一種、独特の潔さを感じさせ、
彼女の向こう側に淡い赤に世界を染めているのはハナミズキ。彼女は、この森で眠り続けた少女の心の在り様を指し示すかのような可憐な花を付けていた。
そう。まるで、私の思いを受けて止めて下さい、と言うかのような……。
其処から目線を下げて大地に目を転ずれば、春の野を彩る色彩の数々。タンポポが、菜の花が、アブラナ、スズランの姿も見える。
紅い花が、白い花が、黄色の花が。
色も種類も、そして香りも。すべてに置いて関連性のない花々が咲き乱れる世界。
ここは死の森に奇跡のように開いた光の当たる場所。ここまで続いて来た緑の天蓋が途絶え、ぽっかりと丸く開いた空間に、春の野を彩る花々が咲き誇る場所。
いや、各種の神話が伝える、極楽や天国と呼ばれる場所は、このような場所の事を指すのかも知れない。
リューヴェルトには、そう思える場所で有った。
「ここが、龍穴と言う場所か……」
方角。ハクと言う少女に教えられたおおよその距離。
更に、これまで走り抜けて来た、妖樹に守られた緑のトンネルがここで途絶えた点。
そして何より、森が放つ禍々しいまでの死の臭いを、この場所だけは感じる事がない。
まるでその夥しい花々の生命が、周囲に満ちる死を宥めているかのように感じられる場所。
ここが目的地。西に存在する龍穴とみて間違いない。
花に溢れた世界の中心に向け五歩進み、その場で周囲を一周分見回してみるリューヴェルト。
月の光りが降り注ぐこの地は、神聖にして、侵すべからざる雰囲気も持って居るのは間違いない。
そして、其処から更に、一周分、確認の為に視線を巡らせようとした瞬間、
「おや、もう到着なさって居たのですか?」
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ