第10話 目覚めたのは天上天下唯我独尊的美少女ですよ?
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わず怯んで仕舞うかのような強い視線。
口調も、かなりキツイ口調。
但し、何故か美月には、その時の破壊神の少女の中に、優しさのような物を感じた。
そう。もしかするとこの辺りが、彼女が破壊神で有りながら創造神の面も持つ神格で有る証なのかも知れない。
「え、えっと、アンタと、ハクちゃんが、どんな関係かな〜なんて思ったんだけど……」
まさか、自分の方向に向き直った瞬間、ふわりと広がった長い黒髪の様子と、月下に佇むその姿に視線を逸らす事が出来なかった、などと言う本当の事は口に出来ない。
何故か、この目の前の少女に対しては。
その美月の問い掛けに対して、それまでの睨み付けるような瞳から、やや遠くを見つめるような瞳へと変化させる自称豊穣の女神さま。
いや、彼女は別に物理的に遠くを見つめた訳では無い。この視線は、明らかに懐かしい思い出を語る者の瞳。
懐かしい、失って仕舞った大切な何かを語る時、人は優しく成る。そんな事を感じさせる瞳で有った。
「あいつは友達よ」
昔話で語られる内容と寸分違わぬ内容を口にする自称豊穣神の少女。
そして、
「あの頃のあたしは、自分が何者なのかさえ判って居なかったから。その時に出会ったのがあいつ。別に、その他の連中と何にも変わらない、ただの友達」
そう語りながら、少女は右手の人差し指と中指で胸を飾る十字架に触れる。
しかし、普通に考えると、そんな友達との約束を信じて、こんな寂しい場所でずっと眠り続けるのであろうか。
少し黙りこくって、その少女を見つめる美月。
訝しげに、急に黙って仕舞った美月を睨み付ける破壊神の少女。いや、おそらく本人はただ美月の事を見つめているだけの心算かも知れないが、何故か、この少女の場合は睨み付けているように見えて仕舞うらしい。
少し首を振る。あの昔話が正しいのなら、他の友達やそれ以外。おそらくは恋人のような存在も居た可能性も有るけど、彼女と同じような存在たちは、自分の事は考えて居るけど、他人の事には無関心だと言う部分が存在して居た。
そんな相手……。自分の事には無関心な相手の中で、唯一、彼女の事を見付け出してくれた相手が本当にハクだったのなら、彼女の訪れを待って、この地で眠り続ける可能性もゼロではない。
もっとも、あの昔話では、相手は少年で、眠り続けて居るのは彼女と言う説明だったから、まるで悲恋の末に別れた恋人を待つような物語と成って居たのに、その実、別れた相手も少女だったようなので、少し物語的には、美月としては不満の残る結末と言わざるを得ないのだが……。
「ところで、さっきの台詞なんだけどさぁ」
名前通り、美しい月の光りを金の髪に反射させ、ただ黙りこくったまま、自らを見つめる美月に対して、
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