第10話 目覚めたのは天上天下唯我独尊的美少女ですよ?
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大樹の根本に眠る少女が僅かに身じろぎを行う。
そして、その瞬間にほんの少しだけ揺れるまつ毛と、その愛らしい口元の微かな動き。
これは……、間違いなく風がもたらせた偶然などではない。
それまで、規則正しいリズムで上下していた胸が、少しそのタイミングがずれ、
胸の中心の一所に留まっていた銀の十字架が、微かな音を立てて首から垂れ下がる。
そして……。
寝返りを打った後に少し伸びを行う眠れる美少女。
そう。伝説に語られる破壊神にして、創造神と言われる少女が長い眠りから、今、目覚めようとしていたのだ。
「う……ん――」
意味不明の言葉。それに続き上半身を起こし、其処で両腕を頭の上に思いっきり伸ばし、それに合わせて両足もピンと伸ばす。
何となく、その場に眠って居た少女の雰囲気に相応しい、精気に溢れた目覚め。
そうだ。其処に存在していたのは、一般的な少女の爽やかな目覚め。決して世界を滅亡させる破壊神を思わせる凶悪な物でもなければ、創造神の目覚めと言う、ある種荘厳な雰囲気の物でもない。
ごく一般的。健康な少女の朝の目覚めを思わせる一場面。
大きく伸びをした後、一度強く瞑られた瞳がゆっくりと開いて行く。少しぼんやりとした雰囲気だった大きな瞳が、徐々に精気をみなぎらせ、黒目がちの強い光を宿した瞳に変わって行くのが良く判る。
そう。最初は未だ夢の世界に身体の半分を残して来ているような表情が、彼女の見た目の年齢に相応しいあどけない表情を感じさせ、やがてその表情が瞬きを行う度に抜け落ちて行き、変わりに明晰な知性を示す色がその顔に浮かび上がって来たのだ。
そして……。
そして、大樹の根を枕に、仰向けに成っていた状態から上半身のみを起こし、周囲を一周分見渡す。そうして其処から更にもう一周分、余計に見渡してから、少女は初めて口を開いた。
「あんた、未だそんな事やって居るの?」
その黒目がちの瞳にやや呆れたような色を浮かべ、言葉の端にも同じ雰囲気をにじませながら。
彼女の視線の向かう先に存在していたのは……。
「私ですか?」
挑むような強い視線で見つめられたハクが、少し戸惑いながらも、彼女に相応しい少しおっとりした口調でそう答えた。
ただ、彼女に浮かぶのは矢張り疑問符。まして、昔話に伝えられているのは少年。どう考えても、ハクの事を言っているとは思えない。
「あんた以外に、誰が居るって言うのよ」
疑問符が浮かび続けるハクを更に追い詰めるかのように、立ち上がりながらそう言う破壊神の少女。両方の腕を腰に当て、妙に上から目線の台詞で。
ただ、流石は破壊神にして創造神。少なくとも、彼女の発して居る唯我独尊的雰囲気は、神と呼ぶに相応しい雰囲気
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