第十話 〜捜索〜
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。
私は今もなお増え続ける逃亡兵の中で急がねばならないのに敵将に構っている暇などない。
かといってこの陣内を敵将を巻きながら探すには余りにも狭すぎる。
『我が名は牌豹(ハイヒョウ)!いざ!』
そうこう悩んでいる間に敵将はこちらへ馬を走らせてくる。
…ならば。
私もそれに合わせて敵将に馬を走らせた。
どれ程の手合いかはわからない。
だが、打ち合うその数合すら今の私には惜しい。
だからこそ、この一刀に渾身を込める。
敵将との距離は僅か。
もう少しで互いの間合いに入る距離。
私は駆ける馬の上で薙刀を頭上高くに構えた。
『好きあり!』
敵将は私の構えを見てすぐ反応し、槍の握る位置を浅くし、間合いを伸ばてガラ空きになる胸元に向けて槍を突き出してくる。
その間僅か。
間合いに入るギリギリの瞬間だった。
…成る程、自ら敵将に挑むだけあって中々な手合いだ。
これでは避けるか中途半端に凪ごうとすれば馬上での体を維持できなくなる。
はたまた並の手合いではそのまま間合いを見誤り突き崩されてしまうだろう。
…だが。
『フンッ…!』
私はそのまま渾身を込めて薙刀を振り下ろした。
ガキンッ
『…え』
それがすれ違い際に聞こえた彼の言葉だった。
私は後方の敵将には目もくれずに馬を走らせた。
グサッ
微かにだが、私の後ろからは槍の先端が地面に突き刺さる音が聞こえた。
それを聞いた後、私は天幕と天幕の間をすり抜けて唖然としているであろう敵将の視界から逃げた。
私の槍捌き完璧だったはずだ。
間合いギリギリで見せた敵将の隙。
そしてそれに乗じて意表を突いた間合い詰め。
自分の腕に自信があった分、槍が届かぬ内に勝利を確信していた。
…だが、気付いたら敵将は私の横をすり抜けていた。
また、敵将の胸元を貫くはずだった私の槍はいつの間にか矛先を失っていた。
呆然。
まさにその言葉が当てはまる状態に私は陥っていた。
私は矛先を失った槍を眺めながら、間合いの瞬間に起きた出来事を思い返す。
"フンッ!"
その声はまさに敵が持っていた得物を振り下ろした瞬間だったのだろう。
…だが、それが私の槍の矛先を斬り落としたのか?
…あり得ない。
経験からしてあの間合いでは彼の得物が私の得物を捉えるより先に胸元を槍が貫いていたはずだ。
振り下ろす動作、しかもあんな胴が隙だらけになる程掲げた薙刀が私の槍を捉えられる訳がない。
それこそ彼の薙刀が私の槍の突きを上回る高速の斬撃でなければ…。
『…ッ』
だが、私はふと見た地面に突き刺さる槍の矛先を見て背筋が凍った。
その地面
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