暁 〜小説投稿サイト〜
〜烈戦記〜
第十話 〜捜索〜
[7/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
象を改め始めるようになる。

そして3年前等々いがみ合い続けた両国は同盟を結ぶにいたった。


『…』

だが、その尊い同盟は今正に目の前で崩れ落ちている。
しかも、それは彼らからの裏切りによってだ。
私は家臣の中でも最後まで主戦派の立場をとっていた人間だが、その分自論を曲げるに当たって誰よりも北国との関係を期待していた人間になっていた。
だからこそ尚更この現実が悲しくてならなかった。

だが、父上が言われた"時が経てば人が変わり、人が変われば方針が変わる"の言葉は何と無く開戦前のやり取りで理解できた。
豪統殿はきっとこの流れに抗っただろう。
そういうお方だ。

『刑道晃様』
『…なんだ?』

隣に馬を並べた"奴宮"(ドグウ)が声をかけてくる。

『敵陣内は既に敵味方の入り混じる混戦状態にございます。ですので、一旦残る兵を温存するのが上策かと…』
『いや、このまま一気に攻めて早期に次戦に備える』
『ははっ』

そうだ。
これからが本当の戦なのだ。
小競り合いに時間を割くつもりはない。

『…北国は変わりませなんだな』

奴宮が深いため息の後に言葉を並べた。

『…あぁ』





『も、もうダメだ!』

ある兵士とのすれ違い際にそんな言葉が聞こえた。
横目に見えたその兵士は味方側だ。

敵前逃亡。

戦闘中に一人でも逃げ出す者が現れればたちまち周りを巻き込んで一気に敗走の流れが出来上がる。
だからこそ一軍を率いる将はこの一人を出さない為に日々の訓練や兵士達の信頼を勝ち得ていなければならない。
そして戦闘中にもしも現れてしまえば"死"をもって厳罰に処さねばならない。
それが強兵を率いる軍律というものだ。

だが、今の私にはその兵士を厳罰に処すよりも今の目的の為に背律行為を見逃す事を選んだ。
理由は簡単だ。
元々練度が低く、上の将が上の将なだけに日常の酷使が予想できるこの部隊で高々一人を見せしめにした所で効果が無いと踏んだからだ。

もう時間がない。
今はその事実だけが私を焦らせた。
私は既に何回と繰り返した行為を続ける。
天幕の入り口に薙刀の刃を引っ掛けて中に入る。

『豪帯様!』

中では敵兵と味方兵が刃を交えていた。
その光景に何度目かになる冷や汗をかいた。
急いで豪帯様の姿を探す。

…だが、それらしき人影は見当たらない。
良くも悪くもここにはいないようだ。
私は心の中で安堵しながらも急いで天幕を出た。

『待たれい!』

だが、天幕を出ると同時に敵意の篭った声で静止をくらう。
そして声の方へ振り返れば馬に跨り槍をこちらへ構える敵将の姿があった。

『名のある武将とお見受けいたす!』

厄介な事になった
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ